保育園には、元気いっぱいに走り回る子もいれば、静かにじっくり取り組む子もいます。その中で「内向的な性格」と言われる子は、大人数の場で戸惑ったり、新しい活動に時間がかかったりすることがあります。
けれど、内向性は決して弱さではなく、その子が持つ“深さ”“感性”“慎重さ”という大切な特性でもあります。
この記事では、保育士として日々感じてきた経験をもとに、内向性の子に寄り添う保育のポイントや、家庭でできるサポートを丁寧にまとめました。
内向性性格とは?保育園でよく見られる特徴
内向性と聞くと「おとなしい」「引っ込み思案」といったイメージが先に立ちますが、本来は“外の刺激よりも内側からエネルギーを得る傾向”を指します。
つまり、静かな環境のほうが力を発揮しやすく、深く考えたり、じっくり観察したりする時間を大切にする気質です。保育園のにぎやかな環境の中では、次のような姿が見られることがあります。
- 初めての活動にゆっくり時間をかけたい
- 大勢の前で発表するのが苦手
- 友達は好きだが、自分から近づくまでに時間がかかる
- じっくり遊べる場所を好む
- にぎやかな場で疲れやすい
こうした姿は、その子の“困りごと”ではなく、あくまで「その子らしさ」です。保育者はまず、この気質を否定せず、「ゆっくりでも大丈夫」という安心感を伝えることが基盤になります。

保育士としてよく見る“がんばりのサイン”
内向性の子は、外から見えにくい“がんばり”をしていることがあります。
たとえば、友達と同じ遊びについていこうと必死に状況を読み取っていたり、新しい活動の前に心の準備を整えようとしたり…。
そのために疲れやすく、夕方にぐっと静かになることもあります。こうした内なる努力に気づき、そっと言葉を添えるだけで、子どもは大きな安心を得ます。
また、内向性の子は「自分の気持ちを整理してから話す」ことが多く、保育士が急かしてしまうと、かえって話しづらくなることがあります。ゆっくりと待つ姿勢を大人が見せることで、子どもは安心して自分のペースを保てます。

内向性の子が安心できる環境づくり
保育園という集団の中でも、内向性の子が力を発揮できる環境を整えることで、子どもの表情はぐっと柔らかくなります。ここでは、園で実践しやすい工夫をまとめました。
①“ひとりになれる空間”を確保する
にぎやかな保育室でも、クッションコーナーや絵本の角など、少し落ち着けるスペースがあるだけで、内向性の子は安心します。大人が「ここにいていいんだよ」と示しておくと、子どもは刺激を調整しながら活動に戻ることができます。
特に、新しい活動の前後にこのような空間があると、子どもは気持ちを切り替えやすくなります。保育士が「ここで休んでいいよ」と一言添えるだけでも、その子にとって大きな支えになります。

②スケジュールを事前に伝える
急な変更は大人でも戸惑うものですが、内向性の子にとっては大きな負担になります。「次は○○するよ」「あと3分で片付けるよ」と見通しを持たせることで、心の準備が整い、活動への参加がスムーズになります。
視覚的なタイマーや写真カードなどの補助ツールを使うと、安心がさらに大きくなる場合もあります。特に小さな子どもは言葉だけだと理解が難しいため、視覚情報を加える工夫は効果的です。
③一対一の関わりを大切に
内向性の子は大人数の中では声を出しにくいことがあります。だからこそ、保育士との一対一の短い関わりが自信の源になります。
膝をついて目線を合わせ、「見ていたよ」「がんばっていたね」とごく小さな行動を丁寧に拾い上げることで、子どもは“理解してもらえた”という安心を得ます。
また、保育士が「この子はこういうペースなんだ」と園全体で共有することも大切です。担任だけでなく、他の職員も共通理解を持つことで、子どもはより安心しやすくなります。
友達関係を育てるための保育の工夫
内向性の子は、友達と関わりたい思いはあっても、きっかけづくりに時間がかかることがあります。強引に輪の中へ促すのではなく、自然に関われる雰囲気を整えることが大切です。
①共通の遊びを見つけるサポート
ひとり遊びが好きでも、興味のある遊びを通じて“隣で一緒に遊ぶ”関係が育まれます。ブロック・ままごと・パズルなど、集中しやすい遊びは良い入口になります。保育士がさりげなく同じ遊びの子同士を近くに配置するだけでも、自然な交流が生まれます。
また、無理に会話を促さなくても、横で同じ活動をしているだけで満足している場合もあります。大人は「もっと関わらせなきゃ」と焦る必要はなく、子ども同士の自然な距離感を尊重して見守る姿勢が大切です。

②無理に発言させない
「発表が苦手=自信がない」わけではありません。言葉にするまでの時間を確保しつつ、少しずつ自分のペースで表現できる場を作ることが大切です。「言いたい時でいいよ」と伝えるだけで、子どもは安心して参加できます。
発言の機会は「大勢の前で話す」以外にも、個別場面や小グループでのやり取りなど、多様な形があります。子どもが表現しやすい場面を見つけていくことで、少しずつ自信が積み重なっていきます。
③ゆっくり仲良くなるリズムを尊重する
内向性の子は、少人数の友達との関係をじっくり育てていく傾向があります。広い友達関係よりも、“深い関係”を好む傾向があり、それ自体が素晴らしい特徴です。保育者はこのリズムを無理に変えず、子どもの安心を軸に見守りましょう。
また、保育士が関わりすぎると、その子自身のゆっくりとした関係づくりのペースを妨げる場合もあります。少し距離を置きながら「必要な時だけそばにいる」姿勢が、子ども同士の心地よい関係を育ててくれます。
家庭でできる内向性の子へのサポート
家庭では、保育園よりもさらに安心できる環境があるため、内向性の子が本来の力を発揮しやすい場所になります。無理に明るく振る舞わせる必要はなく、ありのままを認める関わりが何よりの支えになります。
①「無言の時間」も肯定する
内向性の子は、頭の中で整理してから話すことが多いため、沈黙の時間が長くなることがあります。この沈黙を否定せず、子どものペースに寄り添う姿勢が、自己肯定感につながります。
②少しずつ外の世界に慣れる機会をつくる
地域の子育てイベントなどは、少人数・短時間で参加できるため、内向性の子のペースに合いやすい環境です。本人の様子を見ながら、無理なく経験の幅を広げていけると良いでしょう。
③苦手な場面は“作戦会議”をする
発表会や慣れない活動など、内向性の子が不安を抱きやすい場面では、事前に「どうする?」「ここまでできたらOKにしようか」と、子どもと一緒に作戦を考えることが効果的です。不安が具体的に言語化され、取り組みやすくなります。
内向性は“弱さ”ではなく“深さ”のある個性
保育士として、内向性の子は“丁寧に世界を受け止める力”を持っていると感じます。観察が得意、集中力が高い、慎重で状況判断が的確…これらは成長とともに大きな強みになります。
その子が安心できる環境と、大人のちょっとした理解があるだけで、表情は驚くほど柔らかくなり、「私のままでいいんだ」と感じられるようになります。
内向性を変える必要はありません。大切なのは、その子のリズムと世界を尊重すること。保育者と家庭が同じ方向を向いて寄り添うことで、子どもはゆっくり、でも確かな歩みで育っていきます。
まとめ
内向性の子どもは、外からは見えにくい“深いがんばり”を抱えていることがあります。
保育園では、安心できる環境づくり、無理をさせない関わり、一対一の対話が大きな力になります。
家庭でも、沈黙を尊重したり、作戦会議をしたり、子どものペースを大切にすることで、内向性はその子の大きな強みとして育っていきます。
どの子も「自分らしくいられる時間」が増えるよう、保育者と家族が一緒に寄り添っていけると良いですね。
・・・今日も一日ちはるびより
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