できるようになるより、「やってみたい」を大切に。子どもの自主性を育む関わり方

靴を履こうとする子どもを見守る母親。朝のやさしい光が差し込む家庭の一場面。

「自分でやりたい!」——そんな子どもの声を聞いたとき、あなたはどんな気持ちになりますか?

忙しい朝や急いでいる場面では、「時間がないから」「こぼすから」と、つい手を出してしまうこともあるかもしれません。

でも、その「やりたい」という気持ちこそ、子どもが自分の力を信じて前に進もうとしている大切なサインなのです。

ここでは、子どもの「やってみたい」を大切にしながら、保護者としてどのように見守り、関わっていけるのかを一緒に考えていきましょう。

子どもがボタンを留めようとし、母親が微笑んで見守る朝の光景。

子どもの「やりたい!」にはどんな意味がある?

挑戦したい気持ちは“成長のサイン”

「やりたい!」という言葉の奥には、「自分でやってみたい」「大人のようにやってみたい」という成長への意欲があります。

子どもは日々、大人の動きをよく見ています。靴を履く、エプロンを結ぶ、スプーンを使う――そんな小さなことにも「自分もやってみたい」と思うのは、模倣と挑戦を通して世界を広げている証拠です。

この時期に大切なのは、“結果よりも過程を見守ること”。上手くできるかどうかより、「やろうとしている姿」を認めてあげましょう。

園庭で帽子をかぶろうと頑張る幼児の姿。

「できない悔しさ」も大切な経験

子どもが「やりたい」と言って挑戦しても、思うようにできないこともあります。
「できなかった」と涙を見せるとき、大人はつい「だから言ったでしょ」「ほら貸して」と手を出したくなりますが、その瞬間こそ成長のチャンスです。

「悔しい」という気持ちは、次に向かう原動力。大人が結果を整えてしまうと、その気持ちを味わう機会を奪ってしまいます。そっと「悔しかったね」「でもがんばったね」と受け止めるだけで、子どもは自分の力を信じ直せます。

靴を履こうとする子どもを優しく見守る母親。

「できるようにする」より「やってみたい」を応援する関わり方

見守る・待つ・任せるの3ステップ

子どもの自主性を育むには、「やらせる」でもなく「手を出す」でもない、“ちょうどいい距離感”が大切です。
そのためのキーワードが、見守る・待つ・任せる

まずは見守る——危険でない限り、できるだけ手を出さずに観察してみましょう。

次に待つ——子どもが自分のペースで試せる時間を確保すること。

最後に任せる——成功も失敗も含めて、子ども自身に任せてみること。

このサイクルを繰り返すことで、「自分で考えて行動できる力」が自然と育ちます。

言葉のかけ方を変えるだけで変わる子どもの表情

言葉ひとつで、子どものやる気は大きく変わります。
「まだ無理よ」ではなく「やってみる?」、「できるかな?」より「どうやってやってみようか?」——問いかけ方を少し変えるだけで、子どもは“認めてもらえた”と感じます。

また、できたときは「上手にできたね」よりも「がんばってたね」「工夫したね」と、努力や過程を褒めることが大切です。
それが次の挑戦への自信につながります。

台所で野菜を洗う子どもと、それを笑顔で見守る親。

年齢別・“やりたい気持ち”のサポート例

1〜2歳:「まねっこ期」は“失敗もご褒美”

この時期は「大人のまね」が大好き。スプーンを使う、靴を履くなど、まだ上手にできなくても「やってみたい」気持ちが溢れています。
失敗しても、「こぼしちゃったね」「一緒に拭こうか」と優しく対応しましょう。
失敗を怒らず受け止めることで、「やってみていいんだ」と感じ、挑戦する心が育ちます。

3〜4歳:「できた!」を実感できる環境づくり

3〜4歳になると、少しずつ手先が器用になり、自分でやる喜びを味わうようになります。
この時期は「成功体験」を増やすことがポイント。

お手伝いなら「テーブルを拭く」「洗濯物をたたむ」など、達成感を感じやすい作業を一緒にやってみましょう。
そして終わったあとには「助かったよ」「ありがとう」と感謝を伝えることが、何よりのご褒美になります。

家族と一緒にテーブルを拭く子どもの姿。

5歳前後:「自分で考えたい」を尊重する余白

5歳ごろになると、子どもは「こうしたい」という意志が強くなります。
大人がやり方を教えすぎると、せっかくの「自分で考える力」が育ちません。

「どうしたらうまくいくかな?」と問いかけ、考える時間を与えることが大切です。
また、子どもが考えた方法が少し違っていても、すぐに正解を示さず、「その方法、やってみようか」と尊重してみましょう。

自分で積み木を組み立てる子どもと、それを見守る親。

手を出したくなった時に思い出したいこと

「待つこと」も立派なサポート

忙しい日々の中で、「早くして」「こぼすからダメ」と言いたくなる場面は多いもの。
けれど、「待つ」という行為も立派なサポートです。

子どもが自分でできるようになるには、試行錯誤の時間が必要。
大人が焦らず見守ることで、子どもは安心して挑戦できます。

見守る親の気持ちもケアしよう

「つい手を出してしまう」ことに、罪悪感を持つ必要はありません。
それは“助けてあげたい”という優しさから生まれるものです。

ただ、その優しさの中に「信じて待つ」も加えてみましょう。
子どもの成長を信じて一歩引く——それが本当のサポートにつながります。

見守る母親と、遊びに夢中な子どもの穏やかな時間。

家庭でできるちょっとした工夫

子どもの“自分でやる”を叶える環境づくり

自立を支えるのは「環境の工夫」です。
子どもの目線に合わせた棚、手が届く位置のハンガー、小さな踏み台——これだけで「自分でできる!」がぐんと増えます。
「やりたいのに届かない」「重くて持てない」といった物理的なハードルを減らすことも、立派な支援です。

「ありがとう」「助かったよ」の言葉で自己肯定感を育む

子どものお手伝いやチャレンジには、結果よりも気持ちを受け止める言葉を返しましょう。
「ありがとう」「助かったよ」「うれしいな」——こうした言葉が、子どもの中に「自分の行動が誰かを喜ばせた」という感覚を残します。
それは将来、他者を思いやる力や自立心の土台となります。

洗濯物を運ぶ子どもを見守る親。

まとめ:子どもの“やってみたい”が、未来の自信につながる

子どもの「やってみたい」気持ちは、成長へのスタートラインです。
大人が少し手を引いて見守ることで、子どもは自分の力を発見していきます。

うまくいかないときも、それを乗り越える経験こそが未来の自信につながります。
「できるようになる」よりも、「やってみたい」を応援する——その関わり方が、子どもの心をしなやかに育てていくのです。

・・・今日も一日ちはるびより

(関連リンク)
▶︎ 「子どもの自己肯定感を育てる言葉かけ」
▶︎ 「失敗を受け止める親の関わり方」