目次
朝の登園準備、夢中になっている遊びをやめるとき、外出前の「行きたくない」、夜の「まだ寝ない!」。
子どもと一緒に暮らしていると、気持ちの切り替えがうまくいかずに、親が困ってしまう瞬間は本当に多いものです。
「どうしてこんなに時間がかかるの?」「こんなに遊んでいたらご飯が遅くなる…」と焦る気持ちもよく分かります。
一方で、保育士として毎日多くの子どもたちと過ごしていると、切り替えが苦手なのは“特別なことではない”と分かります。
むしろ、幼児期の特徴としてごく自然であり、発達の途中では多くの子どもが通る道でもあります。
この記事では、保育士の現場経験と、家庭で実践しやすいアプローチを組み合わせ、「子どもの気持ちの切り替えを助ける関わり方」を徹底的に解説します。
日々の生活の中ですぐに取り入れられる声かけ、環境の工夫、うまくいかないときの考え方、年齢別の対応まで、詳しくまとめています。
今日から少しずつ実践するだけで、親も子どもも気持ちが軽くなり、毎日のリズムが整っていきます。
ぜひ、親子のペースで読み進めていただければ嬉しいです。

気持ちの切り替えが苦手な子どもは多い?特徴とよくある姿
保育園でも「切り替えが苦手」と感じる子どもはとても多くいます。
朝の支度に時間がかかる子、遊びを切り上げられない子、思い通りにいかず泣いてしまう子…。
その多くが、じつは発達の途中にある“自然な姿”であり、親が心配する必要のないケースもたくさんあります。
年齢発達によって「切り替えにくさ」が起きる理由
幼児期の子どもは、“今の気持ち”の影響を強く受けています。
大人のように「今はやめて、あとで続きをしよう」と頭で整理する力は未発達で、衝動性や感情の揺れもそのまま行動に表れます。
特に3〜5歳頃は、自我がグッと育ってくる時期でもあり、以下のような理由で切り替えが難しくなりがちです:
- 前頭前野の発達がまだ弱く、感情のコントロールが難しい
- 「見通し」を立てる力が未発達で、次の行動に向かう準備ができない
- 興味関心に強く引っぱられ、「今を続けたい」が強くなる
- 言語化能力が未熟で、気持ちをうまく伝えられない
- 社会的なルールの理解が途中段階で、“自分の世界”を大事にしがち
これらはすべて発達の特徴です。
むしろ「今に集中できること」は、幼児期の強さでもあり、遊びや学びの深まりにもつながります。
家庭でよく見られる“切り替え困難のサイン”
ご家庭でも、以下のような姿はよく見られます。
- 遊びからご飯、お風呂へ移行できない
- お出かけ前に靴を履かない、走り回ってしまう
- テレビや動画を「まだ見る!」と主張する
- 眠くても「寝ない!」と抵抗する
- 「楽しい・嫌だ」の気持ちが大きく、すぐに行動が変えられない
- 気持ちが乱れると、泣き続けて落ち着きにくくなる
こうした姿は、保育現場でも日常的に見られるもので、決して珍しくありません。
「ワガママ」と誤解されやすいポイント
切り替えができないと、つい「ワガママなのかな?」と思ってしまうことがあります。
ですが、実際には“ワガママ”ではなく、
自分の気持ちが大きく揺れていて、どうしていいか分からない状態
であることが多いのです。
大人が「そろそろやめて動いてほしい」と思う一方で、子どもは「この楽しい気持ちを手放したくない」「やめる理由が分からない」と感じています。
そのズレが、泣き・怒り・固まるといった行動として出ています。
まずは「切り替えは発達の途中で身につくもの」という視点を持つと、親の心にも余裕が生まれます。

家庭でできる“気持ちの切り替え”を助ける関わり方の基本
まずは気持ちを受け止める「共感のひと言」
切り替えを助ける上で一番大切なのは、気持ちを否定せずに認めることです。
保育現場でもまず意識されている基本姿勢です。
たとえば、遊びからご飯への切り替えが難しいとき:
「まだ遊びたかったよね」
「この電車、とっても楽しいよね」
「途中でやめるの、悲しくなっちゃうんだよね」
こうした共感だけで、子どもの泣きや抵抗が弱まることもよくあります。
気持ちを理解してもらえたと感じると、子どもは安心して次に進む力が湧くからです。
行動の見通しを示すと切り替えやすくなる理由
子どもは「次に何をするのか」が分からないと、不安から動けなくなることがあります。
そのため、事前に見通しを伝えることはとても重要です。
たとえば:
- 「あと5分でお風呂にするよ」
- 「ご飯のあとに続きを作ろうね」
- 「着替えたら絵本読むよ」
- 「このアニメが終わったら歯みがきね」
ちょっとしたことですが、“次が分かる”だけで子どもの心は落ち着き、切り替えがスムーズになります。
「選択肢を渡す」ことでスムーズに動ける環境をつくる
親が「○○しなさい」と指示ばかり出すと、子どもは反発したくなります。
そこで活用したいのが選択肢の提示です。
「パジャマにする?それとも歯みがきから?」
「ブロック片づけるのと絵本片づけるの、どっちにする?」
「靴は青と黒、どっちにする?」
こうすることで“自分で選んだ”という満足感が生まれ、行動がスムーズに進みやすくなります。
保育現場でも非常によく使う方法で、主体性を引き出す関わりとして定評があります。

毎日の生活で使える声かけ・工夫の実例
「遊びからご飯へ」場面別の声かけ例
家庭でいちばん多く困る場面が「遊びをやめるとき」。
保育士は、この切り替えを助けるために“予告→共感→代替案”という流れをよく使います。
●予告
「あと5分で終わりね」
「タイマーが鳴ったらおしまいね」
●共感
「すっごく楽しいんだよね、分かるよ」
●代替案(次の楽しみ)
「ご飯のあとに続きをしようね」
「お手伝いしてくれる?」
この流れがあると、子どもは気持ちを整理しながら行動を切り替えやすくなります。
「お出かけ前」「寝る前」に役立つ切り替えのコツ
●お出かけ前のコツ
- 玄関に靴やカバンをまとめておく(環境準備)
- 「10時になったら出発するね」と見通しを伝える
- 「今日はどの靴にする?」と選択肢を渡す
●寝る前のコツ
- 照明を暗めにして、活動を落ち着かせる
- 絵本タイムを作り「寝るモード」に移行しやすくする
- 次の日の楽しみを軽く伝える(例:「明日は散歩しようね」)

タイマーや絵カードを使った家庭での工夫
タイマーや絵カードは、保育士の現場でも大人気の“見える化ツール”です。
言葉だけで指示されるより、視覚情報の方が子どもには分かりやすいからです。
特にこんな子に効果的です:
- 言葉を聞くより、見た方が理解しやすい子
- こだわりが強く、急な変更が苦手な子
- 急に切り替えられない子
絵カードは手作りでもOK。「朝のしたく」「ご飯」「遊び」「お風呂」「ねる前」など一枚ずつあると便利です。

うまくいかないときの考え方とケア
親がイライラしてしまうときの対処法
切り替えがうまくいかず、親もイライラしてしまうことはあります。
気持ちが乱れると、どんな声かけをしても響きにくくなってしまいます。
そんなときは:
- 10秒だけ深呼吸する
- 一度その場を離れて気持ちを落ち着ける
- 子どもと距離を取って穏やかな声に戻す
- 「今日はうまくいかない日だ」と割り切る
親も人間です。完璧にやろうとすると疲れてしまいます。
できる範囲でOK、少しずつ積み重ねれば十分です。
子どもが「不安」「疲れ」から切り替えにくくなる場合
切り替えができない背景には、下記のような“心の状態のサイン”が隠れている場合もあります。
- 保育園で疲れている、刺激を受けすぎた
- 睡眠不足で気持ちのコントロールが難しい
- 環境の変化に不安を感じている
- 家族の忙しさを敏感に察して緊張している
特に環境変化があった日は、切り替えが普段より難しいことが多いです。
保育園や専門機関に相談した方がいいケース
次のような場合は、保育士や専門機関に相談することも検討してください。
- 生活全体で極端に切り替えができず、親子ともに苦しくなっている
- パニックが頻繁で、長時間落ち着かない
- 生活リズムが崩れてしまい、家庭で対応が難しい
各自治体の「子ども家庭支援センター」では、専門相談員が話を聞いてくれます。
早めの相談は親の心の負担を軽くし、子どもをより安心させることにもつながります。
まとめ|家庭の関わりが、子どもを“切り替えやすい子”へ育てる
気持ちの切り替えは、毎日の生活の中で少しずつ育っていく力です。
親が共感して見通しを伝えることで、子どもは安心し、自分で切り替える力を少しずつ獲得していきます。
“うまくいかない日”があって当然。
その積み重ねの中で、子どもは必ず成長します。
・・・今日も一日ちはるびより
関連リンク:
・子どものイヤイヤ期を乗り越える声かけのコツ
・保育士が実践する“遊びの切り上げ方”のコツ


