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1〜3歳頃に訪れる「イヤイヤ期」。 毎日の生活の中で「イヤ!」「自分でやる!」「ちがう!」という声が増え、親としては戸惑うことも多い時期です。
保育園でも、1・2歳児のクラスでは日々だれかが泣いたり怒ったりしながら気持ちをぶつけています。それほど“当たり前”の成長の姿なのです。
この記事では、保育士として多くの子どもと関わってきた経験から、イヤイヤ期をラクに乗り越える声かけのコツを分かりやすくまとめました。 今日から使える言葉かけ、場面別の具体例、うまく行かない日の考え方など、実践的な内容を丁寧に解説します。
なぜイヤイヤ期は起きる?保育士が見てきた子どもの本音
イヤイヤ期は“反抗期”ではなく、「自分」という心が育ち始めた証拠です。 保育士の視点から見ると、イヤイヤの背景には次のような大きな成長があります。
イヤイヤ期は「自我の芽生え」が理由
1〜3歳頃の子どもは、少しずつできることが増え、「自分でやりたい」という欲求が強くなります。 しかし、思い通りにできないことも多く、気持ちの整理が追いつかないため「イヤ!」が爆発します。
この時期の特徴として:
- 自分の意思がはっきりしてくる
- “やりたい気持ち”と“できない現実”の差に戸惑う
- 言葉で伝えきれず、行動で表現する
- 切り替えが難しく、泣き声が大きくなりやすい
こうした行動は“困った姿”ではなく“成長の途中の姿”。 保育園でも毎日よく見られるごく自然な発達の流れです。

「自分でやりたい気持ち」がうまく処理できない
子どもは「できるようになってきた自分」を感じたい時期です。 靴を履きたい、スプーンを持ちたい、服を選びたい——そんな欲求がどんどん強くなります。
しかし実際には:
- 靴がうまく履けない
- 服が裏返しのまま
- 思ったように手が動かない
- 時間がかかりすぎてしまう
この「うまくいかない悔しさ」がイヤイヤを生みます。 保育士として寄り添うときも、まずはこの“悔しい気持ち”に気づいてあげるところから始まります。
家庭で見られるイヤイヤの典型例
ご家庭では、次のようなイヤイヤが目立つ場合が多いです。
- 着替えを拒否する
- 遊びをやめられない
- ご飯を食べたくない
- お風呂に入りたくない
- 寝る時間になっても元気
- ちょっとしたことで泣き出す
- 「ママがいい!」「パパはいや!」が増える
保育園でもよく見られる姿なので、“うちだけ大変”と思わなくて大丈夫です。
イヤイヤ期をラクにする“声かけの基本”
イヤイヤ期の対応は“技術”よりも“関係づくり”が大切です。 子どもの心に響きやすい声かけを覚えておくと、親子の毎日がぐっとラクになります。
まずは気持ちを受け止める「共感のひと言」
イヤイヤ期にいちばん効くのは、注意でも説得でもなく、気持ちを受け止めることです。
「イヤだったんだね」 「やりたかったよね」 「悲しくなっちゃったね」 「自分でやりたかったんだよね」
このように“気持ちの名前”を代わりに言ってあげると、子どもは落ち着きやすいです。 保育園でも、まずは“共感”を必ず最初に入れます。

選択肢を渡すと子どもが動きやすくなる
子どもは命令されると反発しますが、 選択肢を渡されると自分で決められる満足感が生まれるため動きやすくなります。
例えば:
- 「靴は赤と青、どっちにする?」
- 「先にズボン?それともシャツ?」
- 「歩く?抱っこ?」
これは保育園でも定番の方法で、イヤイヤ期の子には特によく効きます。
“見通し”を伝えると不安が減って落ち着く
イヤイヤが激しい子ほど、先がわからない状況に弱いです。 そのため“次に何が起こるか”を短く伝えるだけで、ぐっと安心します。
「あと5分でお風呂だよ」 「ごはん食べたら遊ぼうね」 「このアニメが終わったら寝るよ」
視覚的に伝えるためにタイマーを使うのも効果的です。

場面別|今日から使える声かけ実例
ここからは、ご家庭で特に悩みやすい「生活の切り替え場面」を中心に、 保育士が日常的に使っている声かけ・工夫を実例としてまとめていきます。 どれも“今日からできる”シンプルなものばかりです。
朝の準備でイヤイヤする時の声かけ
朝は、子どもも大人も心と体のエンジンが温まっていない時間帯。 「起きたくない」「やりたくない」というイヤイヤが出やすく、親も焦りがちです。
● 予告は短く・優しく
「そろそろ起きるよ。起きたら一緒にお水飲もうね」
“起きなさい!”よりも、次の楽しみへのつながりを見せる方が動きやすい姿がよくあります。
● 手順を細かく分ける
「まずお顔だけ洗おう。できたらシャツにしようね」
“全部一度に”が難しいのがイヤイヤ期。 1つずつステップを提示すると、子どもが混乱しません。
● 選択肢で自主性を守る
「靴下はしましま?それとも青?」
これだけで、イヤイヤから “自分で決めたい気持ち” に切り替わることがよくあります。

ご飯の時間に起きるイヤイヤへの声かけ
“遊びたい気持ち”と“ごはんに切り替える必要”がぶつかり、 この場面はイヤイヤの大きな山になりがちです。
● 遊びからの切り替えは事前の予告が命
「あと3分でごはんね。タイマー鳴ったらおしまいね」
見通しがあるだけで失敗が減ります。 保育園でも、切り替えの5分前予告は毎日の習慣です。
● 少量からスタートできる選択肢
「最初は一口だけ食べてみる?スープからがいいかな?」
“全部食べさせたい”という大人の気持ちは一旦横に置いて、 “最初の一歩”が出る声かけが効果的です。
● 気持ちの共感が一番効く時間帯
「まだ遊びたかったんだよね。楽しかったんだね」
この一言があるだけで、子どもの泣きのピークが大きく下がります。

お風呂に入りたくない時の声かけ
“寒い”“遊びを続けたい”“疲れた”など理由はさまざま。 お風呂イヤイヤは全国共通の育児あるあるです。
● まずは見通しと安心感を伝える
「今日はあったかいお湯だよ。3分だけ入ってみようね」
● 遊びの要素で気持ちを切り替える
「アヒルさん連れてく?それともペットボトルシャワー?」
● 気持ちの共感を一度はさむ
「遊びたかったんだね。すぐには切り替えられないよね」
“気持ちを否定しない”ことで、お風呂へのハードルが下がります。

寝る前のぐずり・イヤイヤに効く声かけ
1日の疲れが出てくる寝る前は、子どもの気持ちが不安定になりやすく、 親も早く寝かせたい気持ちから焦りやすい時間帯です。
● 部屋の環境から切り替える
「電気少し暗くするね。静かな夜にしよう」
環境の力で気持ちを落ち着かせてあげるのは保育士もよく使う方法です。
● 小さな見通しで安心させる
「絵本2冊読んだら寝ようね」
数字は分かりやすく、気持ちの整理にも役立ちます。
● 遊びたい気持ちは否定しない
「楽しかったんだね。まだ遊びたいよね」
否定されないことで、子どもは落ち着きやすくなります。

外出準備で固まる・泣く時の声かけ
靴を履くのを嫌がる、玄関でストップする、ベビーカー拒否……。 外出前はイヤイヤの宝庫です。
● 選択肢で行動を促す
「歩いていく?抱っこでいく?」
● スモールステップで進める
「まず靴だけ履こう。できたらシール貼ろうね」
● 気持ちを言葉にする
「行きたくない気持ちなのかな?ちょっと不安だったね」
特に“気持ちを代弁する”のは、外出イヤイヤでよく効きます。

兄弟がいる家庭ならではのイヤイヤ対策
兄弟のいる家庭では、どうしても「待つ」「譲る」場面が増えます。 そのため、イヤイヤも競争のように激しくなりがちです。
● 順番を“見える化”する
「次は〇〇くんの番ね。終わったら〇〇ちゃんね」
● “特別感のあるひと言”を入れる
「今だけママを独り占めだよ」
● 兄弟どちらも認めていく
「待ててえらいね」「やりたい気持ちがあったんだね」
兄弟のケンカやイヤイヤは“どちらかを否定しない”ことが大切です。

うまくいかない日の対処法|親の心を守るコツ
イヤイヤ期は「対応の正解」を探しすぎると、親の心が先に疲れてしまう時期です。
保育士である私自身も、家庭に帰ればただの親。子どもが泣き止まない日や思い通りにならない日は何度もありました。 そのうえで感じるのは、親の心を守ることは、子育ての一部であるということです。
親がイライラした時に使える“リセットのひと言”
子どもの泣き声、叫び声、思い通りにならない行動が続くと、どんな大人でも心が揺れます。 そんなとき、保育士がよく使うのが「自分への声かけ」です。
- 「一回深呼吸しよう」
- 「大丈夫、大丈夫」
- 「今日はペースを落とそう」
- 「これは成長の途中」
自分への言葉は、気持ちのブレーキになります。 感情が高ぶりそうな瞬間にひとつ入れるだけで、言動が落ち着きやすくなります。

完璧を目指さない方が子育てはうまくいく
SNSや育児情報があふれる時代。 「こんな声かけがいいらしい」「こうしなきゃ」など、知らず知らずのうちに自分を追い込んでしまうお母さん・お父さんはとても多いです。
でも、イヤイヤ期の子育てで本当に大切なのは、がんばりすぎないこと。 完璧よりも「ちょっと余裕のある親でいること」のほうが、子どもは安定します。
例えば:
- 今日は丁寧に関われる日 → 気持ちに寄り添う声かけを多めに
- 疲れている日 → 最低限の関わりでOK
- うまくいかない日 → 明日やり直す気持ちで十分
保育園でも、子どもが泣き続ける日、切り替わらない日、どうにもいかない日は必ずあります。
そんな日は「今日はこういう日」と柔らかく受け止めることで、職員自身の心を保っているのです。
疲れた日は“減らしていい家事”を決めておく
イヤイヤ期を乗り越えるには、家事の負担を調整することも大切です。 どこを減らせば親の余裕が戻るかを知っておくと、心がラクになります。
- 夕食はレトルトや冷凍食品に頼る日があってよい
- 洗濯は翌日にまわす日があってよい
- おもちゃの片付けを完璧にしなくてよい
- テレビ・動画を時間延長する日があってもOK
育児は持久走。 無理にがんばり続けると、必ずどこかで疲れ切ってしまいます。 力を抜く場所を作ることも、立派な育児の工夫です。

「怒ってしまった…」と落ち込んだ日はどうする?
イヤイヤ期は誰でも怒ってしまう日があります。 保育士である私でも、娘が2歳の頃は思い通りにならず声を荒げてしまう日がありました。
そんな日の立て直し方は、意外とシンプルです。
- 必要なら「さっき怒りすぎちゃったね」とひと言伝える
- 自分を責めすぎない
- 次に同じ場面が来たらどう言うか考える
子どもはとても柔軟なので、親が素直に謝ってくれることで安心します。 怒ってしまった事実よりも、その後どう関わったかが親子関係に残るのです。
それでもイヤイヤが強い場合に知っておきたいこと
一般的なイヤイヤ期の姿とは別に、強いこだわりや不安を持つ子もいます。 保育園でも一定数見られますが、適切な関わりで落ち着くことがほとんどです。
環境の変化・生活リズムの乱れは影響が大きい
イヤイヤは、ちょっとした変化にも敏感に反応します。
- 保育園・クラスの変化
- 旅行や来客などの特別な予定
- 睡眠不足
- 食欲低下や体調不良
大人には小さな変化でも、子どもにとっては大きなストレスになることがあります。 生活リズムが整うだけで落ち着くケースも多いです。
「強いイヤイヤ」の裏には気質や不安があることも
強めのイヤイヤが続く場合は、次のような傾向があることもあります。
- 見通しがないと極端に不安になる
- 音や光に敏感で刺激に弱い
- 順番や手順へのこだわりが強い
- 初めてのことが苦手
これらは“問題”ではなく、その子の個性・気質です。 家庭では「安心できる工夫」を増やすことが大切です。
家庭でできる安心の工夫
- 毎日の流れを絵カードで見せる
- 手順を揃える(毎日同じ順番)
- スモールステップで行動する
- 静かな環境を作る
- “できた”を認める声かけを増やす
保育園でも同じ対応をしています。 一貫性があるほど、子どもは安心して過ごせます。
相談してよいタイミング
以下のような場合は、児童館や子育て支援センター、保育園の先生に一度相談してみてください。
- 生活全体で強いイヤイヤが長く続く
- パニック状態がなかなか収まらない
- 登園・外出がほとんどできない
- 親が疲れ切って限界を感じている
相談=問題 ではありません。 専門家の視点が入ることで、家庭の負担がぐっと軽くなることも多いのです。

まとめ|イヤイヤ期は必ず終わる。親子で少しずつ前へ
イヤイヤ期は、子どもが大きく成長していることの裏返しです。 「自分でやりたい」という気持ちが育ち、 「うまくできない悔しさ」や「伝えられないもどかしさ」が表れているだけです。
今日紹介した声かけや工夫は、すべて保育士が毎日の保育で使っています。 家庭でも取り入れやすく、親子の負担を軽くしてくれるものばかりです。
うまくいかない日があって当たり前。 大切なのは、明日またやってみる気持ちが戻ってくることです。 親も子も、ゆっくり少しずつ前へ進めば大丈夫です。

・・・今日も一日ちはるびより
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