「この子、大丈夫かな」
子育てをしていると、ふとそんな不安が胸をよぎることはありませんか。
ちゃんと育っているのか、他の子と比べて遅れていないか、この関わり方で合っているのか…。
特に、周りの情報がたくさん目に入る今の時代は、
「もっと何かしてあげた方がいいのかな」
「このままでいいのかな」
と、答えのない問いを抱えやすいように感じます。
保育士として子ども達と過ごす中で、私が何度も感じてきたのは、子どもが本当に必要としているのは「できるようになること」よりも、「そのままで受け止めてもらえる安心感」だということです。
今回は、「そのままでいい」という感覚が、どうやって子どもの心の土台になっていくのか。 保育の現場での小さなエピソードを交えながら、お話ししたいと思います。

「自己肯定感」って、よく聞くけれど
自己肯定感という言葉を、最近はよく耳にしますよね。
「自己肯定感を高めたい」「自己肯定感のある子に育ってほしい」 そう願う保護者の方も多いと思います。
けれど、「自己肯定感=自信満々な子」「何でもできる子」というイメージが、 知らず知らずのうちにプレッシャーになってしまうこともあります。
本来の自己肯定感は、
「できる・できないに関係なく、自分には価値があると思える感覚」。
つまり、成功体験だけで育つものではなく、
うまくいかなかった経験や、立ち止まった時間も含めて、育っていくものです。
できなくても、泣いても、ここにいていい
ある日、制作活動の時間に、一人の子が泣き出しました。 周りの子はどんどん作業を進めているのに、その子はうまくできなかったのです。
「できない…」 そう言って、手を止めてしまいました。
声をかけようと近づくと、その子は少し申し訳なさそうな顔をしていました。 まるで、「できない自分はダメなんじゃないか」と思っているように。
私は、「じゃあ一緒にやってみようか」でも、「こうするといいよ」でもなく、 まずこう声をかけました。
「できなくて悔しかったんだね」
すると、その子は少し驚いた顔をして、でも安心したように、ゆっくりうなずきました。
それからしばらく、何も作らず、私のそばで気持ちが落ち着くのを待ちました。 無理に完成させることはしませんでした。
結果的に、その日の制作は最後までできませんでした。 でも、その子は帰る頃には笑顔を取り戻していました。
「できなかったけど、ここにいてよかった」 そんな感覚が、少しでも残っていたらいいなと思っています。

「褒める」よりも先に、受け止める
自己肯定感というと、「たくさん褒めなきゃ」と思いがちですが、 実は褒め言葉が届くためにも、土台が必要です。
それは、「この人は、できない自分も見捨てない」という信頼感。
子どもはとても敏感で、 「できたときだけ注目される」 「頑張っているときだけ認められる」 という空気を、無意識のうちに感じ取ります。
だからこそ、 何もしていない時間、立ち止まっている姿、気持ちが荒れている瞬間に、 どう関わってもらえたかが、深く心に残ります。
まず受け止めてもらえた経験があるからこそ、 「じゃあ、もう一回やってみようかな」という気持ちが生まれるのです。
「そのままでいい」は、甘やかしではない
「そのままでいい」と聞くと、 「何もしなくていいってこと?」 「成長を止めてしまわない?」 と不安になる方もいるかもしれません。
でも、「そのままでいい」は、立ち止まることを許す言葉であって、 成長を諦める言葉ではありません。
安心できる場所があるから、子どもは外の世界に出ていけます。 戻ってきても大丈夫だと思えるから、挑戦できます。
これは、大人の私たちにも同じことが言えるのかもしれません。

大人も完璧じゃなくていい
私たち大人も、いつも余裕があるわけではありませんよね。 イライラしてしまう日も、うまく関われなかったと落ち込む日もあります。
でも、完璧な関わりを続けることよりも、 「失敗しても、関係を取り戻せる」経験の方が、子どもにとっては大切です。
大人が謝る姿、気持ちを言葉にする姿は、 子どもにとって「人との関係は修復できる」という学びになります。
子ども達に残したいもの
勉強ができることでも、早く成長することでもなく、 私が子ども達に残したいと思うのは、
「自分は、この世界にいていい存在だ」という感覚です。
それは目に見えず、すぐに結果が出るものでもありません。 でも、人生のどこかで立ち止まったとき、 きっとその人を支えてくれる土台になると信じています。

まとめ
「そのままでいい」という言葉は、とても優しくて、同時にとても強い言葉です。 子どもを甘やかすのではなく、心の土台を支える言葉。
今日うまくいかなくても大丈夫。 泣いてしまっても、立ち止まっても大丈夫。
そのままのあなたで、ここにいていい。 そのメッセージが、子どもの中で静かに、でも確かに育っていきますように。
・・・今日も一日ちはるびより

