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子どもが泣いたとき、怒ったとき、
ついこんな言葉をかけてしまうことはありませんか。
「泣かないの」
「怒らないよ」
「そんなことで怒らない」
静かにしてほしいわけじゃなくて、
早く落ち着いてほしいわけでもなくて、
ただ「どうしたらいいかわからない」だけ。
毎日向き合っているからこそ、
余裕がないときほど、感情の強さに戸惑ってしまいますよね。
保育士として、そして一人の大人として、
私自身も何度も同じ場面に立ち会い、悩んできました。
今回は、「感情を持っていい」ということが、
なぜ子どもにとって大切なのか。
保育の現場での経験を交えながら、ゆっくり考えてみたいと思います。

泣く・怒る=困った行動?
泣いたり、怒ったりする姿を見ると、
「このままで大丈夫かな」
「わがままにならないかな」
そんな不安がよぎることもありますよね。
特に、周りに人がいる場面や、時間に追われているときは、
感情を受け止める余裕がなくなってしまうこともあります。
でも、感情そのものは、良い・悪いで分けられるものではありません。
泣くのは、悲しいから。
怒るのは、悔しいから。
不安なのは、先が見えないから。
どれも、人としてとても自然な反応です。 大人である私たちも、本当は同じですよね。
「泣かないで」の奥にある、大人の気持ち
「泣かないで」と言ってしまうとき、
実は大人の側にも、いろいろな気持ちがあります。
・周りの目が気になる
・どう関わればいいかわからない
・早く切り替えてほしい
それは決して、冷たい気持ちではありません。
むしろ、「困らせたくない」「守りたい」という思いの裏返しです。
けれど、その言葉が何度も重なると、
子どもは少しずつ、こんなふうに受け取ってしまうことがあります。
「この気持ちは出しちゃいけないんだ」
「泣くと、困らせてしまうんだ」
感情を我慢することが“いい子”だと思い込んでしまう前に、
大人が立ち止まって考えられるといいなと思います。
ある日の保育園での出来事
ある日、友だちとのやりとりの中で、
強く怒ってしまった子がいました。
物を投げそうになり、表情はとても険しく、
自分でもどうしていいかわからない様子でした。
私はすぐに注意するのではなく、
少し距離をとって、同じ目線でそばに座りました。
しばらく沈黙が流れたあと、その子がぽつりと言いました。
「だって、貸してくれなかったんだもん」
その言葉には、怒りだけでなく、
悲しさや悔しさ、寂しさも混ざっていました。
「そうだったんだね。嫌だったんだね」
そう返すと、その子は少し肩の力を抜きました。
感情が消えたわけではありません。
でも、「わかってもらえた」ことで、
次にどうしたらいいかを考える余裕が生まれたのです。

感情を出せるから、調整できる
感情をそのままぶつけることと、
感情を感じることは、別のものです。
まず必要なのは、
「感じてもいい」「表してもいい」という安心感。
その土台があってはじめて、
「どうしたらよかったかな」
「次はどうしようか」
という振り返りができます。
感情を押し込めてしまうと、
自分の気持ちがわからなくなり、
結果的に、突然爆発してしまうこともあります。
感情を受け止める=行動を許す、ではない
「感情を受け止める」と聞くと、
「何でも許すことなの?」と感じる方もいるかもしれません。
でも、感情と行動は分けて考えることができます。
「怒ってもいいよ」
「でも、叩くのはダメだよ」
この二つは、同時に伝えていいのです。
気持ちを先に受け止めることで、
子どもは「自分は否定されていない」と感じ、
大人の言葉にも耳を傾けやすくなります。

大人自身の感情も、大切に
子どもの感情に向き合うことは、
大人自身の感情に向き合うことでもあります。
余裕がない日、疲れている日、
どうしても受け止めきれないこともあります。
そんなときは、
「今日はしんどかったな」
「怒っちゃったな」
そうやって、自分の気持ちを認めるだけでも違います。
大人が感情を持っていい姿を見せることは、
子どもにとって「人は感情を持って生きていい」という、
とても大きなメッセージになります。
子どもに伝えたいこと
泣いてもいい。
怒ってもいい。
不安になってもいい。
感情があるから、人は人とつながれます。
その気持ちを、誰かと分け合えた経験が、
人を信じる力になっていきます。

まとめ
感情は、コントロールする前に、まず「感じる」もの。
子どもが感情を出したとき、すぐに正そうとしなくても大丈夫。
その気持ちが、どんなものだったのか。
一緒に立ち止まって考える時間が、きっと子どもの心の力になっていきます。
・・・今日も一日ちはるびより

