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一日の終わり、子どもが安心して眠りにつくまでの時間は、親子にとってとても大切なひとときです。
保育園でも帰りの時間が近づくと、子どもたちが気持ちをゆっくり落ち着けられるように絵本を取り入れることがありますが、これは家庭の寝る前の時間にも欠かせない価値があります。
ゆったりした声の響き、ページをめくる音、寄り添う距離感…。どれもが「今日一日ありがとう」と心を整えてくれる優しい合図になります。
この記事では、保育士として日々子どもたちと向き合う中で感じてきた読み聞かせの魅力を深く掘り下げ、家庭で続けやすい方法を、実際のエピソードも交えながら詳しくお伝えします。
寝る前の絵本がもたらす大切な効果
① 心が落ち着く「入眠のスイッチ」になる
一日の終わりは、子どもにとって意外と「気持ちの処理」が難しい時間帯です。楽しかった出来事、少し不安だった場面、まだ遊びたい気持ち…。そうした感情が混ざり合って、寝る準備の声かけをしても落ち着けないことがあります。
保育園で夕方に絵本を読むと、元気いっぱいだった子どもたちの呼吸がゆっくりと整い、自然に心が静まっていく様子が見られます。これは家庭でも同じで、絵本の時間を“入眠の合図”として使うことで、子ども自身が安心して気持ちを切り替えられるようになります。
また、親の声は子どもにとって世界で一番落ち着く音と言われることがあります。一定のリズムで読み進めるだけで、子どもは“守られている”という感覚を取り戻し、眠りに向かいやすくなります。特に心が敏感な子ほど、この効果が大きいように感じます。

② 言葉の発達を自然と促す
寝る前は、日中より環境刺激が少なく、子どもが「聞く」ことに集中しやすい時間帯です。そのため読み聞かせの言葉がすっと耳に届き、語彙や表現力の育ちにつながります。
保育園でも、繰り返し同じ絵本を読むことで、子どもがセリフを覚えたり、登場人物の気持ちを想像しながら話すようになる姿がよく見られます。「つぎどうなるの?」と目を輝かせる表情は、言葉の世界が広がっている証拠です。
寝る前は子どもの感受性が最もやわらかくなりやすい時間でもあります。その日の出来事と絵本の内容が重なり、子ども自身が気持ちを整理するきっかけになることも少なくありません。
③ 親子の信頼関係が深まり「心の結び目」ができる
寝る前の読み聞かせは、親子が日常の忙しさをいったん手放し、ゆっくりつながり直す時間です。保育園で子どもたちがよく見せてくれるのは、安心できる人のそばで「聞いてほしい」「見てほしい」という無言のサイン。
そのサインに応えるように絵本を読むと、子どもの身体がすっと寄り添い、心がほどけていくのが伝わります。
家庭でも同じで、1冊の絵本を通して親子が同じ世界を共有することで、安心感の土台が育ちます。
親として完璧に読む必要はなく、むしろ「今日は疲れちゃったね」「このページ好きだよね」など、自然な言葉を添えるだけで十分。そうした小さな関わりが、子どもの心に長く残る「結び目」になります。
読み聞かせをより心地よくするコツ
① 明かりは少し落として、やわらかい雰囲気に
寝る前の照明環境は、思っている以上に子どもの気持ちに影響します。明るすぎると目が冴えてしまい、逆に暗すぎると絵本が見えず不安になることがあります。
保育園では絵本の内容に集中しやすいよう、間接照明を使うこともあります。家庭でもスタンドライト一つにすると、自然と親子の空間が“ここだけの世界”になり、安心した雰囲気が生まれます。

② 読むスピードはゆっくり、落ち着いたトーンで
保育士が読み聞かせを行う際も、もっとも意識するのが“スピード”です。気持ちが急いている日はつい早口になりがちですが、ゆっくり読むことで子どもの心はぐっと安定します。
間をしっかりとることで、絵本の余白が子どもの想像力を引き出し、物語の世界を深く味わえるようになります。
③ 絵本は3〜5冊のローテーションで安定感をつくる
寝る前の時間は「変化より安心」。初めての本より、知っている本の方がスムーズに心が静まります。「今日はこれにしようか」と提案すると、子どもがにっこり笑って本を抱える姿はよく見られます。
これは、子ども自身がその絵本に“安心を紐づけている”証でもあります。
年齢別・寝る前におすすめの絵本選び
0〜2歳:繰り返し言葉・やさしいイラストが安心感を生む
幼い子ほど、心地よいリズムに強く反応します。
特に擬音語や短いフレーズの繰り返しは、身体ごとリラックスできるようで、ページをめくるたびに表情がゆるみます。
保育園でも、気持ちが不安定な日ほど、いつもの絵本を選ぶ姿が見られます。
3〜5歳:少し長めの物語で「続きが楽しみ」を育てる
この時期は、登場人物の気持ちを想像する力が伸びてきます。
「どうして泣いたのかな?」「つぎはどうなるかな?」と問いかけると、子どもなりの視点で答えが返ってきて、そのやりとりがまた親子の深い会話になります。
寝る前に「昨日の続き読んで!」と楽しみにする姿も多く見られます。

読み聞かせの悩みと、そのやさしい解決方法
「子どもがハイテンションになってしまう」
原因は絵本の内容だけでなく、親子の雰囲気づくりにも関係します。遊びが盛り上がった直後に読み始めると、子どもは気持ちの切り替えが難しいことがあります。
そんな時は、寝る前の会話やゆっくり呼吸する“間”を数秒つくると、驚くほど落ち着くことがあります。
「なかなか寝てくれない」
生活リズムはもちろんですが、眠りやすい環境づくりや気持ちの整理が整っているかも大切なポイントです。「今日は眠くなさそうだね」と気持ちを受け止めるだけで安心する子もいます。
どうしても心配な場合は地域の支援窓口の相談も役立ちます。
「親が疲れていて読む余裕がない」
短い1冊でいい日があって当然です。むしろ、ページを一緒にめくるだけでも十分に“触れ合い”になります。
保育園でも、子どもが「せんせい、今日はぼくが読むね」と自分で語り始めることがありますが、家庭でも同じように「読んでくれる?」と言うと誇らしげに語ってくれることがあります。
家庭で続けやすい「寝る前のルーティン」を作る
① 絵本 → 歯みがき → おやすみの挨拶 の流れを固定する
この一連の流れは、小さな“安心の階段”のようなものです。同じ順番が繰り返されることで、子どもは何が起こるか予測でき、落ち着いて眠りの準備に入れます。
② 絵本を子ども自身に選ばせることで主体性を育む
自分で選んだ本は特別で、「これを読みたい」という気持ちそのものが満足感につながります。
選ぶことがルーティンの一部になり、寝る前の楽しみにもなります。
③ 無理なく続けられる時間設定にする
5分の日もあれば10分の日もあっていい。家庭によって暮らしのリズムは違うので、無理なく続けられる形こそ最適です。
疲れて読みながら眠ってしまう親御さんもよく聞きますが、それもまた微笑ましい思い出になります。

まとめ|寝る前の絵本は「一日のご褒美」になる
寝る前の読み聞かせは、子どもの情緒を整え、言葉の力と想像力を育て、親子の絆をより深くしてくれる大切な習慣です。
毎日続けようと頑張らなくても大丈夫。できる日の中で、できる範囲で、親子の時間を楽しんでみてください。
絵本をそっと開くその瞬間、子どもの心はすでに安心に向かっています。今日の終わりに「読んでよかったな」と感じられる、そんな優しい時間になりますように。
・・・今日も一日ちはるびより
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