運動会は、子どもたちが一年でいちばん輝く行事。
その一日を「絵本の世界」と重ねてみると、子どもたちの表情や動きが、まるで物語の登場人物のように生き生きとしてきます。
走る・跳ぶだけではなく、想像し、感じ、表現する――そんな“心の運動会”が始まります。
この記事では、保育現場で実践できる絵本をテーマにした運動会の工夫や、親子で楽しめるアイデアを紹介します。
運動会に絵本を活用する意義
絵本がテーマの運動会とは?
「絵本がテーマの運動会」とは、子どもたちがよく知る絵本の世界をもとに競技や演出を構成する運動会のことです。たとえば『はらぺこあおむし』なら色とりどりのフルーツを運ぶ競技、『ぐりとぐら』なら大きなカステラをみんなで作るリレーなど、物語の一部を運動遊びとして表現します。
こうした運動会では、単なる“運動の発表”ではなく、子どもたち一人ひとりが物語の登場人物として自分を表現する時間になります。結果よりも「一緒に作り上げる喜び」を大切にできるのが特徴です。

保育園における絵本の役割
絵本は、保育園での日々の生活の中に深く根づいています。言葉を育て、感情を共有し、想像の翼を広げる大切な教材です。
運動会の準備段階でも、読み聞かせを通じて子どもたちは登場人物の気持ちを考えたり、「どうやったらこの場面を再現できるかな?」と考えるようになります。こうして自然と協力や工夫の心が育ちます。
保育士にとっても、絵本は「子どもたちの世界をつなぐ鍵」。運動会でその力を借りることは、子どもたちの表現力を存分に引き出すチャンスなのです。
親子競技と絵本のコラボレーション
親子競技では、絵本のストーリーをベースにすることで、親子のやりとりがより自然で楽しくなります。
たとえば『おおきなかぶ』をテーマにした綱引きでは、子どもが「うんとこしょ!どっこいしょ!」と掛け声をかけながら、家族みんなで力を合わせます。その場面を思い出しながら笑顔で引っ張る姿は、まるで絵本の世界そのもの。
物語を共有しているからこそ、子どもと大人が心でつながり、運動会が“家族の思い出の一章”になります。

運動会のテーマ設定
世界観を広げる絵本の選び方
テーマを決める際は、子どもたちの日常に親しみのある絵本を選ぶことが大切です。
たとえば、年少クラスでは『しろくまちゃんのほっとけーき』など身近な生活をテーマにした絵本、年長クラスでは『スイミー』『はらぺこあおむし』など少しストーリー性のある絵本がおすすめです。
ポイントは、「子どもたちが自分の経験と結びつけて動けるかどうか」。物語を“演じる”ことよりも、“自分の気持ちとして表現できる”絵本を選ぶと、自然な笑顔と動きが引き出せます。
ユニークな競技名のアイデア
絵本をテーマにした運動会では、競技名にもひと工夫を。 たとえば以下のようなアイデアがあります:
- 『はらぺこあおむし』→「くだものゲットレース」
- 『ノンタン』→「ノンタンのかけっこたいかい」
- 『ぐりとぐら』→「おおきなたまごをはこぼう!」
- 『11ぴきのねこ』→「ねこたちのさかなつりリレー」
競技名に物語の世界を感じられる言葉を入れることで、保護者にもテーマが伝わりやすく、運動会全体の一体感が生まれます。
絵本がもたらす冒険の世界
運動会の舞台装飾や音楽にも絵本の要素を取り入れると、子どもたちは一気に物語の世界へ。
園庭にカラフルな旗を飾り、入場曲に絵本のテーマソングを流すだけで、会場が「冒険の国」に変わります。
たとえば『ピーターラビット』なら草花をモチーフに、『にじいろのさかな』なら青い布で波を表現するなど、シンプルな工夫で雰囲気をつくることができます。

年齢別の絵本活用法
0歳児向けの親子ふれあい絵本
0歳児の運動会は、親子のふれあいが中心です。『だるまさんが』『いないいないばあ』のような繰り返し表現のある絵本をモチーフにすると、安心感と笑顔が広がります。
親が子どもを抱っこして動く「だるまさんのよーいどん!」のような競技は、無理なく楽しめる定番です。
絵本のリズムに合わせた音楽で体を揺らしたり、親子で「ぱっ!」とポーズを決めたりするだけで、あたたかな一体感が生まれます。
年長児が楽しむ競技と絵本
年長児になると、チームで協力したり、役割を理解して動いたりする力が育っています。 そのため、『スイミー』や『てぶくろ』など、仲間と協力して目標を達成する物語を題材にするのがおすすめです。
例えば「スイミーリレー」では、小さな魚役の子どもたちが順番に泳ぐ(走る)ことで大きな魚を完成させる、という演出も可能です。物語を通して“協力の力”を感じ取れる競技は、成長の記念にもなります。
幼稚園での運動会の準備方法
絵本をテーマにする場合、準備段階から子どもたちと一緒に世界を作っていくことがポイントです。
絵本のキャラクターを描いて旗を作ったり、登場する食べ物を工作で作ったりと、製作活動も運動会の延長として楽しめます。
また、練習中に絵本を繰り返し読むことで、動きと物語が自然につながり、当日の演技にも自信がつきます。

絵本を使った具体的な競技案
玉入れを絵本で楽しく
『はらぺこあおむし』をテーマにした玉入れでは、カゴを“大きな葉っぱ”に見立て、カラフルな玉を“くだもの”にして投げ入れます。
競技の前に絵本を読み聞かせておくと、子どもたちのイメージが広がり、動きがより生き生きとします。
リレーに見る絵本の要素
リレーは運動会の花形。『11ぴきのねこ』や『おむすびころりん』のように、「みんなで力を合わせる」「ストーリーが進む」絵本を取り入れると、より一体感が出ます。
たとえば「ねこたちのさかなリレー」では、バトンを“魚のぬいぐるみ”にして走るだけで、笑顔があふれる競技になります。
ダンスで表現する絵本の世界
『しろくまちゃんのほっとけーき』『ノンタン』『おつきさまこんばんは』など、リズミカルな絵本はダンスにぴったり。
子どもたちが絵本のフレーズを歌いながら踊ることで、“動く絵本”のような発表になります。 背景に絵本の色使いを再現するだけでも、世界観が伝わりやすくなります。

運動会を盛り上げる保護者の役割
保護者も参加する親子競技
保護者が積極的に関わることで、子どもたちは大きな安心感を得ます。 親子競技に絵本の要素を加えることで、親も自然と笑顔に。
たとえば『そらまめくんのベッド』をテーマに「ふわふわベッド運び競争」を行えば、親子で力を合わせながら優しい時間を共有できます。
絵本の読み聞かせで感動を与える
運動会のクライマックスで、保育士や保護者代表が絵本を読み聞かせる演出もおすすめです。
『ありがとうのえほん』『あなたがだいすき』など、感謝や成長をテーマにした絵本を選ぶと、会場全体があたたかな空気に包まれます。
子どもたちの頑張りを物語で締めくくることで、「できた!」という達成感がより心に残ります。
保育士が伝える運動会の楽しさ
保育士にとって運動会は、子どもたちの1年の成長を感じる特別な行事。 絵本を取り入れることで、指導する側も「教える」ではなく「共に創る」感覚を味わえます。
子どもたちの姿を見守りながら、「この子たちは物語の主人公なんだ」と感じる瞬間——それこそが、絵本と運動会を結びつける最大の喜びです。

運動会の成功事例
ディズニーをテーマにした運動会
ある園では、『トイ・ストーリー』や『ミッキーといっしょ』などのディズニー絵本をテーマにした運動会を実施しました。
装飾にキャラクターカラーを取り入れ、子どもたちは自分の好きなキャラクターの帽子を手作り。
保護者からも「一緒に世界を楽しめた」という声が多く、子どもたちの満足感も高かったそうです。
動物と絵本の組み合わせ競技
『どうぶつサーカスはじまるよ』『ねずみくんのチョッキ』など、動物が登場する絵本は運動会にぴったり。
動きやポーズをまねしやすく、どの年齢でも楽しめます。 「どうぶつになりきり障害物リレー」などは人気の定番競技です。
保育園の運動会成功エピソード
筆者の園では、『はらぺこあおむし』をテーマにした運動会を開催しました。 入場門には大きなあおむし、最後の演技では“ちょうちょ”の羽を背負った子どもたちが園庭いっぱいに広がりました。
保護者の方からは「子どもたちが本当に物語の中に生きていたようだった」と感動の声。 絵本の力が、運動会に魔法をかけた瞬間でした。

まとめ
絵本は、子どもたちの心をつなぐ魔法の扉。 運動会にそのエッセンスを取り入れることで、ただの発表会ではなく「子どもたちの物語」が生まれます。
親子・保育士・地域が一緒になって一つの世界を作ることで、思い出はより深く、温かく残ります。 次の運動会では、ぜひお気に入りの絵本をテーマに、子どもたちの想像力と笑顔を広げてみてください。
・・・今日も一日ちはるびより
→ 関連リンク:
・「秋の運動会を楽しむ工夫」
・「子どもの表現力を育てる絵本10選」
・「親子で楽しむ季節の行事アイデア」

