運動会が子どもに与える影響|挑戦心と協調性の育ち

保育園の運動会でリレーを走る子どもたちと、それを見守る保育士の様子。秋の光があたたかく包む風景。

保育園の運動会は、子どもたちにとって一年の中でも大きなイベントのひとつです。普段の遊びとは違う“本番”の緊張感や達成感、そしてみんなで一つの目標に向かう喜びが詰まっています。

その過程には、挑戦する気持ち・あきらめない力・友だちと協力する姿勢など、子どもの発達に欠かせないたくさんの学びがあります。

この記事では、保育士として見守る立場から、運動会が子どもの成長にどのような影響を与えるのかを丁寧にお伝えします。

練習の中で芽生える「挑戦する心」

運動会の練習は、ただ体を動かすだけの時間ではありません。かけっこやダンス、玉入れ、リレー…どの競技も、子どもたちが自分なりに「できるようになりたい!」と努力を重ねる場です。

最初は転んだり、順番を間違えたり、思うように動けなかったりすることもあります。しかし、先生や友だちの励ましを受けながら少しずつ上達していく過程で、子どもたちは“挑戦する楽しさ”を知ります。

たとえば、ある年中児の男の子は、最初は走るのが苦手で泣き出してしまいました。それでも毎日少しずつ練習を続け、迎えた本番では最後まで笑顔で走りきりました。その表情には、「自分でできた」という誇りがありました。

こうした体験は、“できない自分”を受け入れつつ、“やってみよう”と前向きに向かう力を育てます。これは後の学習や人間関係にもつながる、非認知的な発達の大切な土台となります。

保育園の園庭でリレー練習に励む子どもたちと、笑顔で見守る保育士。秋の光が差し込む穏やかな風景。

友だちと一緒に頑張る「協調性」の育ち

運動会では個人競技だけでなく、友だちと力を合わせる団体競技も多く取り入れられています。大玉転がし、綱引き、パラバルーンなど、どの種目も“みんなで息を合わせる”ことが求められます。

子どもたちは、最初のうちは自分の思い通りに動けず戸惑うこともありますが、「せーの!」と声をそろえたり、「次は○○ちゃんの番だよ」と教え合ったりする中で、仲間との関わり方を自然に学んでいきます。

特に年長児の姿には大きな成長が見られます。小さい子を気にかけて手をつないであげたり、転んだ友だちに「だいじょうぶ?」と声をかけたり。こうした思いやりや助け合いは、保育園生活全体を支える“社会性の芽”でもあります。

保育士は練習の中で、「みんなで力を合わせるとできるね」「○○ちゃんが待っててくれたから成功したね」といった声かけを重ね、子どもたちの“協力する喜び”を言葉で支えます。結果だけでなく“過程”を大切に認めることで、子どもたちは他者を尊重する心を育てていくのです。

大玉転がしを通して協力し合う子どもたち。楽しそうに息を合わせて転がす姿が印象的な秋の運動会シーン。

保護者との絆が深まる「共有の時間」

運動会は、子どもだけでなく保護者にとっても特別な一日です。日々の成長を目に見える形で感じられる貴重な機会であり、「こんなに頑張れるようになったんだ」と心から感動される方も多いです。

子どもにとっても、観覧席から聞こえる「がんばれー!」という声援は何よりの励まし。大好きな家族が見てくれているという安心感が、自信や達成感をさらに大きくします。

運動会を通して、保育士と保護者が同じ目線で子どもの成長を喜び合えることも大切です。「家でもいっぱい練習していました」「家では恥ずかしがっていたのに本番でできてびっくりしました」といった会話が生まれ、園と家庭がよりあたたかくつながっていきます。

こうした“共に喜ぶ時間”が、子育てにおける安心と信頼の土台を作るのです。

観覧席で笑顔で応援する保護者たち。温かなまなざしが園児たちに向けられている運動会のひとこま。

運動会後の子どもの気持ちを受け止める

運動会が終わったあと、子どもたちは達成感とともに、少しの疲れや喪失感を感じることもあります。楽しかった一日が終わったあと、ふと「もう一回やりたいな」とつぶやく子も多いものです。

保育士は、そんな子どもたちの気持ちを丁寧に受け止めながら、頑張ったことを一緒に振り返ります。「最後まで走りきったね」「お友だちと協力できたね」と具体的に伝えることで、自分の努力に気づき、自信を深めていきます。

一方で、うまくいかず悔しい思いをした子には、「くやしかったね」「次はどうしたらうまくいくかな?」と気持ちを受け止めながら前向きな気づきを促します。こうした共感的な関わりが、子どもたちの自己肯定感を支える大切なケアになります。

場合によっては、家庭でも「がんばったね」と一言伝えるだけで、子どもの心は大きく安定します。行事のあとの時間こそ、成長がぐっと深まる瞬間なのです。

運動会のあと、保育室で先生と子どもが振り返りをしている様子。あたたかな光に包まれた安心感のある風景。

保育士が感じる「一人ひとりの成長」

運動会を通して、保育士が最も感じるのは“子ども一人ひとりの成長の瞬間”です。普段はおとなしい子が大勢の前で笑顔を見せたり、いつもリーダーシップを発揮している子が友だちを励ます姿を見せたり。
そのどれもが、日々の積み重ねの結果であり、子どもたちの“心の育ち”を象徴しています。

ときには、練習中に涙を流す場面もありますが、それも大切な経験の一部です。涙を流しても、立ち上がって再び挑戦する姿に、保育士たちは毎年大きな感動を覚えます。
「できたね」と共に喜び合えるこの瞬間こそ、保育のやりがいを強く感じる時間でもあります。

運動会の最後に全員でお辞儀をしているシーン。達成感のある穏やかな表情。

まとめ|運動会は“心の成長”を感じる日

運動会は、体を動かすこと以上に「心の成長」を見つめる日です。挑戦する力、協力する心、自分や友だちを大切に思う気持ち――どれも日々の保育の積み重ねの中から生まれる宝物です。

本番の舞台で見せる子どもたちの真剣な表情、精いっぱい頑張る姿、そして終わった後の笑顔。その一つひとつに、確かな成長の証が詰まっています。

運動会をきっかけに子どもたちが自信を深め、次の挑戦に向かっていく――その過程をこれからも丁寧に見守っていきたいものです。

・・・今日も一日ちはるびより

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