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夕方、保育園の玄関に響く「ママだ!」「パパ!」の声。 一日の終わりに訪れる“お迎えの時間”は、子どもたちにとって待ち遠しい特別な瞬間です。 保育士として見守っていると、その再会の一場面に、子どもたちの成長や親子の絆がたくさん詰まっていることに気づきます。 この記事では、保育士の視点から見る「お迎えの時間の意味」や「声かけの工夫」についてお伝えします。
お迎え時間は1日の“クライマックス”
園児にとっての「お迎えの瞬間」とは
お迎えの時間は、子どもにとって「安心」と「喜び」が一度に訪れる瞬間です。 朝、「いってらっしゃい」と保護者と離れたあのときの不安が、夕方「ただいま」という言葉とともにほっと溶けていきます。 特に小さな子どもにとっては、“親が自分を迎えに来てくれる”という体験そのものが、信頼の土台を育てる大切な時間です。
泣いていた子も、笑顔で抱きつく子も、その姿ひとつひとつが“今日も一日がんばった証”。 保育士にとっても、子どもが笑顔で帰っていく姿は何よりのごほうびです。

保育士が感じる1日の締めくくりの空気
夕方の保育室は、一日の中でも特別な空気が流れます。 お昼のにぎやかさが落ち着き、窓から差し込む夕日の中で、子どもたちはお迎えを待ちながら穏やかに遊んでいます。 「もうすぐママ来るかな?」という小さなつぶやきに、「楽しみだね」と返すその会話が、子どもの安心につながります。
お迎えの時間は、“今日一日の締めくくり”であり、“明日への橋渡し”の時間でもあります。 だからこそ、保育士は最後の一瞬まで丁寧に見守る気持ちを大切にしています。
子どもたちの表情が教えてくれる“心の成長”
最初は泣いていた子が「先生、バイバイ!」と笑顔に変わるまで
入園当初、毎朝泣いて登園していた子が、数か月後には笑顔で「先生、また明日!」と手を振るようになります。 その変化には、保育士が毎日積み重ねてきた安心の時間、子どもが少しずつ園を“自分の居場所”として感じられるようになった証が表れています。
お迎えの時間に「今日は楽しかった!」と笑顔で話せるようになることは、子どもの心の成長を映す鏡。 保護者にとっても「泣かずに過ごせたんだ」と実感できる大切な瞬間です。

成長のサインを見逃さない保育士の視点
保育士は、毎日少しずつ変わる子どもの表情や言葉を見つめています。 お迎えの時、「今日は先生とお散歩したよ!」と自分から話すようになったり、 保護者の姿を見てもすぐに駆け寄らず、「先生にさようならしてから帰る」と言えるようになる姿も、成長のサインです。
その小さな自立の芽を、見逃さずに言葉にして伝える。 「今日、○○ちゃん、自分から靴を片づけたんですよ」 そんな一言が、家庭と園をつなぐ温かな報告になります。
お迎え時の親子の会話から見える安心と絆
お迎えの玄関で、子どもが嬉しそうに話し出す姿。 「今日はね、ブロックでお城作ったの!」「○○くんと滑り台した!」と、 その日の出来事を一生懸命伝えようとする言葉には、“今日も頑張ったよ”“見てほしい”という子どもの思いがたくさん詰まっています。
保護者が「そっかぁ、すごいね」「楽しそうだね」と優しく受け止める表情を見ていると、 保育士としても胸が温かくなります。 お迎えの会話は、子どもが安心して一日を終える“心のリセット”の時間なのです。
→追記:
時には、言葉にできない思いを抱えて帰る子もいます。少し疲れていたり、保護者の顔を見てほっとして涙がこぼれることも。そんなとき、保育士は「今日もがんばったね」とそっと声を添えます。
子どもにとって“がんばったね”は、努力を認めてもらえる魔法の言葉。園で過ごす時間がどんなに充実していても、やっぱりおうちの人の顔を見る瞬間が、いちばん安心できるのです。
また、保護者にとっても、お迎えの時間は1日の中で数少ない「じっくり子どもの表情を見られる」ひととき。仕事の合間では聞けない本音や笑顔が、この短い時間にあふれます。
保育士はその空気を大切にしながら、「おうちに帰ってから、どんな時間を過ごせるかな」と想像します。子どもが安心して家庭に気持ちを切り替えられるよう、園と家庭の“バトンパス”を意識しているのです。

忙しい保護者への声かけの工夫
夕方は、保護者にとっても1日の疲れが出る時間帯です。 仕事帰りで急いでいる方も多く、ゆっくり話す時間がとれないこともしばしば。 そんな時こそ、保育士の「短くても伝わる言葉」が大切になります。
たとえば、 「今日はAちゃんが先生のお手伝いをしてくれたんですよ」 「Bくん、給食をおかわりしていました」 そんな一言でも、保護者は“今日も元気だったんだ”と安心できます。
言葉を選ぶ時に大切なのは、評価ではなく事実を伝えること。 「いい子でした」ではなく、「自分から○○していましたよ」という伝え方が、 子どもの頑張りを正確に届けるメッセージになります。

お迎えが遅くなった日の心のケア
仕事の都合などでお迎えが遅くなる日もあります。 そんな時、保育士が心がけているのは「待つ時間を不安な時間にしないこと」。 絵本を読んだり、静かな遊びをしたりしながら、子どもの気持ちを落ち着かせて過ごします。
「ママ、まだかな…」とつぶやく子に「もう少しで来るね」と優しく声をかけ、 「遅くなっても必ず迎えに来てくれる」という安心感を積み重ねていくことが大切です。

先生と保護者が共有する“今日のひとこと”
お迎えの時間は、先生と保護者が情報を共有する貴重なタイミングです。 長い話はできなくても、「今日は○○が楽しかったようです」「少し眠そうでした」など、 短い“今日のひとこと”が、翌日の保育や家庭での関わりに生きてきます。
保護者の方も「家ではこうなんです」と話してくださることが多く、 その小さな会話の積み重ねが信頼関係を築きます。 笑顔を引き出すようなトーンで、温かく伝えることを意識しています。

お迎え時間が“親子のリセット時間”になるように
夕方の玄関で、手をつないで帰る親子の後ろ姿を見送るたび、 「今日も一日、無事に過ごせた」と感じます。 お迎えの時間は、親にとっても“仕事モードから家庭モードへ”切り替えるリセットの時間。 子どもの笑顔が、一日の疲れをやわらげる瞬間です。
→追記:
お迎えの時間には、保護者それぞれの背景があります。仕事で遅くなる人、兄弟の予定が重なる人――。それぞれの家庭のリズムに寄り添いながら、子どもが安心して帰れるように支えるのも保育士の大切な役割です。
「今日は○○くん、最後までお絵かきしていましたよ」「待つ間もにこにこしていました」そんな一言が、忙しい保護者の心をやわらげます。
また、時には子どもの方から「先生、ママ来るまで一緒にいよう」と甘える姿もあります。そんな時、膝の上で絵本を開きながら「どのページが好き?」と会話を重ねる。たった数分でも、子どもの安心を支える大切な時間になります。
お迎えの夕方は、子どもにとって“もう一つの学びの時間”。待つこと、気持ちを整えること、人と関わること――そのすべてが成長の一歩なのです。

まとめ:お迎えの時間は“成長の鏡”
お迎えの時間には、子どもの成長、家庭との信頼、そして保育士の思いが重なっています。 泣いていた日も、笑顔で帰る日も、その積み重ねが「安心して通える園生活」を作ります。
毎日の“ただいま”の先にあるもの―― それは、子どもが少しずつ自分の世界を広げていくための勇気です。 保育士として、その一歩一歩をこれからも見守り続けたいと思います。
「お迎えの時間も、子どもの成長の一部です。」
・・・今日も一日ちはるびより
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