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「保育園での一日ってどんなふうに過ごしているの?」という声を、保護者の方からよく聞きます。
はじめて預けるときは、子どもがどんな様子で過ごしているのか、泣いていないかな、ちゃんと食べているかなと、心配になるものですよね。
この記事では、保育士の立場から、保育園の一日の流れと、子どもたちが安心して園生活を送るための工夫についてご紹介します。
登園の時間|朝の支度と安心の第一歩
朝、子どもが保育園に到着すると、まずは「おはようございます!」の元気な挨拶から一日が始まります。
登園はその日のスタート。泣いてしまう子、笑顔で手を振る子、それぞれの気持ちを受け止めながら保育士は迎えます。
保護者と保育士のやりとり
登園時には、家庭での様子や体調を簡単に伝え合う時間があります。
「今日は少し眠そうです」「朝ごはんをあまり食べませんでした」など、ちょっとした情報が一日の保育に生かされます。
こうしたやりとりは、信頼関係を育む大切な時間でもあります。
朝の身支度と健康チェック
登園後は、荷物を片付けたり、手を洗ったりと、自分でできることを少しずつ練習していきます。保育士は、検温や視診で体調をチェックし、いつもと違う様子がないかを確認します。体調の変化を早く見つけることが、安心の園生活につながります。
朝泣いてしまう子の中には、別れ際がつらくて涙がこぼれる子もいます。そんなとき、保育士は「ママ、またあとでね」「お部屋で〇〇して遊ぼうか」と声をかけ、気持ちの切り替えをゆっくり待ちます。
数分後にはおもちゃを手に取り、笑顔が戻ることも多いのです。その瞬間に「今日も大丈夫」と、保育士は心の中でそっとつぶやきます。
午前中の活動|あそびの中で育つ力
朝の会が終わると、子どもたちは活動の時間へ。お絵かき、ブロック、ままごと、園庭あそびなど、その日のテーマに沿った活動が行われます。あそびの中には、成長の芽がたくさん隠れています。
自由あそびと設定保育
自由あそびでは、子どもたちが自分の興味を見つけ、好きなことに集中する時間です。一方で、設定保育は、保育士がねらいをもって用意する活動。制作や音楽、運動遊びなどを通して、協調性や表現力を育てます。
遊びの中では「貸して」「いいよ」といったやり取りが自然に生まれます。ときにはケンカになることもありますが、それも大切な経験。
保育士は「どうしたの?」「順番こしようね」と、子どもの気持ちを受け止めながら解決を見守ります。小さなトラブルを通して、子どもたちは“人と関わる力”を身につけていきます。
戸外あそびで感じる季節
天気のいい日は、園庭や公園へ。風の心地よさ、花の香り、虫の声。五感を使って自然を感じる体験は、心の成長にもつながります。子どもたちは思いきり体を動かし、笑い声が園いっぱいに響きます。
春はたんぽぽを摘み、夏は水あそび、秋は落ち葉のシャワー、冬は霜柱を踏む音を楽しむ。季節の変化を肌で感じながら、毎日の遊びが豊かになります。
給食と午睡|リズムを整える大切な時間
活動のあとはお待ちかねの給食。にぎやかな声が食堂や保育室に広がります。「今日のごはんはなにかな?」と楽しみにする子どもも多いです。
苦手な食べ物との向き合い方
給食は、ただお腹を満たす時間ではありません。食事のマナーを学び、苦手な食材にも少しずつチャレンジする機会です。
保育士は「無理なく」「楽しく」を大切にしながら、子どもが自分のペースで食べられるように見守ります。
「ピーマンがちょっと苦いね」「でも少し食べられたね!」――そんな小さな成功体験が、子どもの自信につながります。
お昼寝前の“安心のルーティン”
食後は着替えをして午睡の時間。保育士がトントンと背中を優しくたたくと、いつのまにかスヤスヤ…。お気に入りの毛布やぬいぐるみをそばに置いて、安心して眠ります。睡眠は午後の元気をつくる大切な時間です。
お昼寝はただ休むだけでなく、“気持ちをリセットする時間”。午前中に思いきり遊んだ分、心も体もクールダウンします。
寝顔を見ながら「今日も頑張ったね」とそっと心の中でつぶやく――保育士にとっても、穏やかなひとときです。
午後の活動とお迎え|一日の終わりに見える成長
お昼寝から目覚めると、おやつの時間。午後は絵本を読んだり、制作をしたり、落ち着いた雰囲気の中で過ごします。
午後の遊びと制作
小さな手で紙をちぎったり、のりを塗ったり。制作活動では「自分でできた!」という達成感を味わいます。こうした経験が、自信へとつながっていきます。
保育士は「できたね!」と共感しながら、作品を通してその子の成長を感じます。
お迎えと保護者との時間
お迎えの時間には、「今日はこんなことをしました」と保育士が一日の様子を伝えます。遊びや食事、友だちとの関わりを知ることで、家庭での会話も弾みます。
帰り際、「今日は泣かずにお昼寝できたね」「お友だちと仲良く遊べたね」と伝えると、保護者の方の顔にも自然と笑みがこぼれます。
園での小さな成長を、家庭と一緒に喜び合う――それが保育の醍醐味でもあります。
保育士が大切にしていること|安心できる園生活とは
家庭との連携
保育園の生活は、家庭との連携があってこそ成り立ちます。小さな変化に気づき、共有し合うことで、子どもの心身の安定を守ります。保護者の方も、心配や疑問は遠慮なく伝えてくださいね。
子どもの気持ちを受けとめる
泣くのも、甘えるのも、成長の一歩。保育士は「泣いても大丈夫」「ここにいていいよ」というメッセージを日々届けています。安心できる環境があるからこそ、子どもは少しずつ世界を広げていけるのです。
そして何よりも、子どもの「やってみたい!」という気持ちを尊重すること。たとえうまくいかなくても、その挑戦を認める言葉がけが、次への一歩を生み出します。保育士の言葉ひとつで、子どもの目がキラリと光る瞬間があります。
子どもの目線に立つこと。それが、安心の第一歩です。
年齢別の一日の違い(0・1・2・3歳児)
子どもの発達段階によって、一日の過ごし方やリズムは少しずつ異なります。同じ“保育園の一日”でも、年齢ごとに大切にしている時間の意味や関わり方が変わってきます。
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0歳児: まだ授乳やおむつ替え、睡眠が中心の生活。生活リズムを整えることよりも「個々のペースを尊重する」ことを大切にしています。午前中は抱っこや触れ合い遊び、音の出るおもちゃなどで感覚を刺激し、午後は短いお昼寝をはさんで穏やかに過ごします。
保育士は一人ひとりのサイン(泣き声・表情・手足の動き)を敏感に感じ取り、安心できる抱っこや声かけで応えます。信頼関係が芽生える大切な時期です。
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1歳児: 歩く・しゃべるといった大きな成長が見られる年齢。自分でやってみたいという意欲が芽生える一方、うまくいかずに泣いてしまうことも。
朝は身支度の練習、午前は外あそびで体を動かし、午後は短めの午睡と自由あそびでのびのびと過ごします。
保育士は「自分でできた!」の瞬間を逃さずに褒め、小さな成功体験を積み重ねていきます。
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2歳児: おしゃべりが盛んになり、友だちとの関わりが増える時期。ごっこ遊びや模倣遊びが広がり、保育室ではまるで“小さな社会”が生まれます。
午前中は設定あそびや散歩などの集団活動が中心に。お昼寝の前後にはトイレトレーニングも行われ、生活面での自立が少しずつ進みます。
トラブルも多い時期ですが、保育士は「どうしたかったの?」「こうしてみようか」と丁寧に言葉を返し、気持ちの整理をサポートします。
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3歳児: 集団生活の基礎がしっかりと身につく年齢。お友だちとの遊びが一段と発展し、ルールを守ることや順番を待つことも少しずつ理解できるようになります。
午前は製作やリズム遊びなど集中する活動、午後はゆったりとした遊びや当番活動など、1日の中で“メリハリ”を意識した生活リズムが身についていきます。
保育士は「自分で考えて動ける力」を育てるため、見守る姿勢を大切にします。小さな自立の芽があちこちに見える時期です。
年齢によって過ごし方は違っても、どの子にも共通しているのは「安心して過ごせる場所」があること。その安心が、挑戦する勇気や笑顔を生み出します。保育園では年齢に応じた環境づくりを通して、一人ひとりの成長を温かく支えています。
家庭でもできる園生活サポート
家庭でのリズムづくりも、園生活の安心につながります。早寝早起き、バランスのとれた食事、朝の支度の練習など、無理のない範囲で少しずつ取り入れてみましょう。
また、「今日は何をしたの?」と子どもに聞くときは、できるだけ具体的な問いかけにするのがおすすめです。「今日は誰と遊んだの?」「何を作ったの?」と聞くことで、園での経験を思い出しやすくなります。
家庭と園が同じ方向を向いていると、子どもは安心します。「どちらでも大丈夫」「見守ってもらえている」という気持ちが、自立への大きなステップになります。
まとめ
保育園の一日は、遊びと生活のリズムの中で、子どもが安心して過ごしながら成長する時間です。保育士たちは「今日も楽しかったね」と笑顔で帰れるよう、一人ひとりの心に寄り添っています。家庭と園が手を取り合うことで、子どもにとっての“安心できる居場所”が広がっていきます。
・・・今日も一日ちはるびより
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