毎朝のお見送りで泣きじゃくる子どもを見ると、胸がギュッと苦しくなりますよね。「うちの子だけ?」「ずっと泣き続けるの?」と不安になる親御さんも多いと思います。
私自身も保育士として働き始めた頃、毎朝泣いて離れない子を見て「本当に大丈夫かな」と心配になったことがあります。ところが、その子はお母さんが見えなくなると数分で泣き止み、ブロック遊びに夢中になっていたんです。その姿を見て「子どもってすごいな」と感じました。
私は現役保育士として、これまでたくさんの“泣く朝”を見てきました。そして多くの子どもたちが、時間とともに安心して笑顔で過ごせるようになっていきます。この記事では、子どもがお見送りで泣く理由・登園しぶりの原因・年齢別の特徴・保育士が実践している対応法・親の心のケアについてまとめました。
保育園のお見送りで子どもが泣く理由と登園しぶりの背景
子どもが保育園のお見送りで泣いてしまうのには、いくつかの理由があります。特に低年齢では「分離不安」という自然な発達過程が大きな要因です。また、入園したばかりや長期休み明けは園生活に慣れるまで泣くことが多く、家庭での変化(引っ越しやきょうだいの誕生など)も影響します。親にとっては心配に思える泣き声も、子どもにとっては「安心の証」であることが少なくありません。
分離不安
特に1〜2歳は「親から離れる=不安」という気持ちが強い時期です。泣くことで安心感を求めています。親にしがみついたり、園に入るのを強く拒否する姿はよく見られるもので、決して珍しいことではありません。分離不安は発達の一環であり、親子の絆がしっかりある証拠でもあります。親が安心した表情を見せることで、子どもも少しずつ不安を和らげることができます。
慣れ不足
入園したばかりや長期休み明けは、環境に慣れるまで泣くことがあります。園生活の流れにまだ十分に慣れていないため、朝の切り替えが難しいのです。しかし、毎日の繰り返しで生活リズムが整い、先生やお友達と関わる時間が増えるにつれて、自然に落ち着いていきます。慣れ不足からの涙は一時的なものであり、ほとんどの子どもは数週間から数か月で安心して登園できるようになります。
家庭の変化
引っ越しや下の子の誕生などで情緒が不安定になりやすいです。家庭環境の大きな変化は子どもにとって大きなストレスとなり、園での不安を強めてしまうことがあります。特にきょうだいが生まれたときは、親の関心を奪われたと感じて甘えやすくなるため、朝のお別れで強く泣くことがあります。生活リズムを整え、子どもに安心できる時間を確保することも大切です。
💡 保育士の実感:「泣いて登園しても、数分後にはケロッとおもちゃで遊んでいる子がほとんどですよ」
📖 実際の体験談:ある2歳の子は、毎朝お母さんから離れるときに大泣きしていました。お母さんも心配そうに玄関で見守る日々が続きましたが、保育士が「今日はブロックでお家作ろうね」と声をかけ、園に入るとすぐに遊びに集中して泣き止みました。数週間後には、お母さんと「タッチしてバイバイ」を習慣にすることで、泣く時間が短くなり、笑顔で手を振れるようになりました。
年齢別|保育園のお見送りで泣く・泣き止まない子の特徴
子どもがお見送りで泣く姿は、年齢ごとに特徴があります。発達段階によって不安の感じ方や親への依存度が異なるため、対応の仕方も変わってきます。年齢ごとの特徴を知ることで、親は「この時期はこういうもの」と気持ちを整理しやすくなり、無理にやめさせるのではなく見守る心構えを持てるようになります。
1〜2歳
分離不安のピーク。泣くのは自然な発達の一部で、親に安心感を求めているサインです。この時期の子どもはまだ自分の気持ちを言葉でうまく伝えられず、泣くことでしか感情を表現できません。園に慣れるには時間がかかりますが、先生に抱っこされたり遊びに気持ちを向けたりするうちに、少しずつ泣かずに過ごせる時間が増えていきます。親は焦らず、安心できるルーティンを作ってサポートしてあげましょう。
3〜4歳
「遊びたいけどママと離れたくない」という気持ちの葛藤。言葉で表現できるようになってきている分、登園しぶりが強く出ることもあります。泣く理由を具体的に伝えることもあり、「ママがいい」「今日は疲れてる」など正直な気持ちを話す姿も見られます。この時期は甘えと自立のバランスが難しいため、親が気持ちを受け止めながらも「園での楽しみ」を思い出させる声かけが効果的です。
📖 実際の体験談:3歳の男の子は「今日はお休みしたい!」と毎朝泣いて訴えていました。しかし、園で「先生と一緒に絵本を選ぶ」ルーティンを作ったところ、登園が楽しみになり、泣く日がぐっと減りました。その後は自分から「今日は何読む?」と前向きに聞いてくれるようになり、笑顔で登園する姿が見られるようになりました。
5歳〜
普段は大丈夫でも、気分や体調で急に泣くことがあります。心の成長に伴い、泣く時間は短くなる傾向があります。この時期は友達関係や園での役割が増えるため、感情の浮き沈みが影響して泣くこともありますが、自分で気持ちを切り替える力も育ってきています。親は「今日は泣いてしまったけど、すぐ元気に遊べたね」と肯定的に受け止め、子どもが自信を持てるようサポートすることが大切です。
保育士が教える|お見送りで泣き止まない子どもへの対応法
お見送りのときに子どもが泣いてしまっても、親の接し方次第で切り替えやすくなります。ここでは保育士が日常的に実践している、安心して登園できるための工夫を紹介します。単純なテクニックに見えても、毎日の積み重ねで子どもに大きな安心感を与えることができます。
笑顔で短く別れる
「行ってきます!」とスッキリ送り出すのがポイント。長引かせないことが安心につながります。泣いているからといって時間をかけすぎると、子どもはますます不安になり、別れがつらくなってしまうのです。笑顔で短いお別れは、子どもに「大丈夫だよ」という安心のメッセージを伝える行動になります。
ルーティンを作る
玄関でタッチ、おまじないの言葉、ハグなど。繰り返すことで子どもは「これで安心」と感じやすくなります。同じ行動を続けることで「この後はお母さんと離れても大丈夫」という予測が立ち、不安が軽減されます。習慣は子どもにとって安全基地のような役割を果たします。
📖 実際の体験談:毎朝泣いていた4歳の女の子に「ハグしてからバイバイ」を習慣にしてもらったところ、泣きながらも自分から先生の手を取るようになり、2週間後には笑顔で登園できるようになりました。さらに、その子は「ママとハグすると元気が出る」と言葉で気持ちを表すようになり、親子の関係もより温かいものになりました。
安心グッズ
ハンカチや小さなお守りを持たせると、親とのつながりを感じやすくなります。子どもは不安なときにそのグッズに触れることで気持ちを落ち着けることができます。手作りのお守りや親の香りがするハンカチなど、子どもにとって特別なものを渡すとさらに効果的です。
前向きな声かけ
「ママはお仕事がんばるね、○○ちゃんはおままごと楽しんでね」など、子どもの楽しみに視点を向ける声かけが有効です。否定的な言葉よりも、期待感や楽しみを膨らませる声かけをすると、子どもは自分の気持ちを前に向けやすくなります。例えば「今日はお友達とどんな遊びをしようか」といった問いかけも、子どもの意欲を引き出す助けになります。
👉 関連記事:保育園に慣れるまでの期間はどのくらい?親ができるサポート法
保育園のお見送りでやってはいけないNG対応
親の行動によっては、子どもの不安を強めてしまうことがあります。ここでは逆効果になりやすい対応を、具体的な理由とともに紹介します。親が無意識にやってしまいがちなことばかりなので、意識して避けることが大切です。
長々と園にとどまる
不安を長引かせる原因に。親が離れる決断を先延ばしにすると、子どもも落ち着きにくくなります。園の玄関で何度も振り返ったり、泣いている子を抱きしめ続けたりすると、子どもは「まだ離れてはいけないのかな」と感じてしまい、余計に不安を増してしまうのです。短い時間でスッと離れることが、結果的に子どもの安心につながります。
「泣かないで!」と叱る
気持ちを否定されてさらに不安。泣くことは自然な感情の表現なので、受け止めることが大切です。子どもは親に安心したい気持ちを伝えるために泣いているのに、その気持ちを否定されると「自分の気持ちはわかってもらえない」と感じてしまいます。大切なのは「泣いても大丈夫だよ」「気持ちはわかるよ」と共感を示し、受け入れてあげることです。
子どもを無理に引き離す
信頼関係に影響することも。先生に任せ、親は安心した表情でバトンタッチしましょう。無理に引き離すと、子どもは「親に裏切られた」と感じることがあり、その後の登園をさらに嫌がることにつながる可能性があります。保育士は泣く子どもへの対応に慣れているので、安心して任せ、親は「先生と一緒なら大丈夫」というメッセージを態度で伝えることが大切です。
👉 関連記事:子どもが泣いて登園しぶりするときにやってはいけないNG行動
保育園での子どもの様子(お見送り後の安心材料)
実際には、親が去った後にすぐに泣き止んで遊び始める子が多いです。教室に入ってお気に入りのおもちゃや絵本を見つけると、一瞬前までの涙が嘘のように笑顔になり、友達や先生と楽しそうに過ごし始めるのです。これは「親の前だからこそ泣ける」という安心の証でもあり、子どもが信頼できる大人の前で感情を出せるからこそ起こる自然な姿です。保育士は毎日のようにこうした光景を見ていますし、泣き声から笑い声へと切り替わる瞬間を何度も経験しています。親御さんにとっては不安に感じる朝の涙も、園で過ごす中ではほんの短い時間にすぎません。安心して任せていただいて大丈夫ですよ。
📖 実際の体験談:5歳の女の子は朝は泣いていても、親が帰った後は友達とごっこ遊びに夢中になっていました。お迎えのときにその様子を写真で見せたところ、親御さんが安心し、翌日からは送り出すときに笑顔を心がけられるようになったそうです。
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親の心のケア|保育園のお見送りで泣かれても大丈夫
お見送りで泣かれると、親自身がつらくなり「私のせい?」と責めてしまうこともあります。特に初めての園生活では親の方が不安に押しつぶされそうになることも少なくありません。しかし、泣くのは成長の一部。子どもが安心できる存在を信頼しているからこそ、安心の証として涙を流すのです。保育士としても、親が安心して笑顔で送り出すことが子どもの安心につながると感じています。親が笑顔で背中を押すことで、子どもは「大丈夫なんだ」と安心でき、少しずつ園生活に慣れていきます。
「泣くのは失敗じゃない」
大好きだからこそ泣けるのです。泣く姿を否定する必要はありません。親は「泣いてもいいんだよ」「安心して泣けるんだね」と心の中で受け止めるだけで子どもは救われます。泣き顔も子どもの成長の証であると考えると、気持ちが少し楽になります。
「時間が解決してくれる」
成長とともに必ず落ち着きます。今はその過程だと考えて大丈夫です。子どもの泣きは永遠に続くわけではなく、慣れていくにつれて必ず変化が見えてきます。過去に泣き続けていた子も、半年後には笑顔で走って登園していたケースは数えきれません。時間の力は想像以上に大きな味方です。
「先生に任せてOK」
保育士は“泣く朝”や“登園しぶり”をたくさん経験しています。安心して任せてください。先生たちは泣いている子どもの心を切り替える工夫を知っていて、日々の経験から一人ひとりに合った対応をしています。親は「先生ならきっと大丈夫」と信じて任せることが、子どもの気持ちを安心させる最大のサポートになります。
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まとめ|保育園のお見送りで泣くのは自然なこと
子どもがお見送りで泣くのは自然な姿で、親を信頼している証拠でもあります。泣くことで気持ちを表し、やがて気持ちを切り替えて遊びや学びに向かうのは成長の過程です。
泣いても大丈夫。親が笑顔で送り出し、保育士に任せれば子どもは少しずつ安心して過ごせるようになります。園生活を通じて友達と関わりながら自然に「朝の涙」も減っていきます。
「泣く朝」や「登園しぶり」は試練に感じられても、時間とともに多くの親子が乗り越えてきました。笑顔で「いってきます!」と言える日が必ず訪れます。
一緒に頑張っている親御さんへ――どうかご自身を責めず、子どもの成長を信じてくださいね。毎日少しずつ積み重ねることで、子どもも親も共に成長していけます。明日は今日より少し楽になるかもしれない、そんな希望を胸に、笑顔で送り出してあげましょう。
・・・今日も一日ちはるびより