保育士のほんね|お迎えのとき、ちょっと困ってしまう保護者の行動とは?

夕方の保育園玄関で、保育士が親子を笑顔で見送る様子。夕日の光があたたかく差し込む、安心感のある風景。

夕方の保育園。1日の保育を終え、子どもたちが順に保護者のもとへ帰っていく時間。笑顔や「今日もありがとう」の言葉が飛び交うあたたかなひとときです。けれどその裏では、保育士が少し困ってしまう“お迎え時あるある”がたくさんあります。
この記事では、現場の保育士のほんねを交えながら、お迎えの時間に起こりがちな出来事や、保護者とよりよい関係を築くためのヒントを紹介します。

「ちょっとだけ遊ばせてください」— 帰るタイミングが難しい!

お迎えに来たあと、「もう少しだけ遊びたい!」と駄々をこねる子どもは少なくありません。そんな時、保護者から「少しだけいいですか?」と声をかけられると、保育士はいつも少し迷ってしまいます。

園としての事情と保育士の本音

閉園間際の園では、片づけや翌日の準備、清掃、記録作業などが並行して行われています。安全管理のため、園庭や保育室の利用範囲を制限していることもあります。
それでも「せっかく楽しく遊んでいるのに止めさせるのは可哀想」と思うこともあり、保育士の中でも葛藤が生まれます。

「少しだけいいですか?」の一言はやさしい気遣いのつもりでも、実は職員全体の動きを止めてしまうこともあるのです。保育士は子どもの安全を守る立場として、できるだけ時間どおりの退園をお願いしたいというのが正直な気持ちです。

帰りたくない子への声かけの工夫

「帰るのいや!」という気持ちは、子どもが保育園を安心できる場所だと感じている証拠。保育士は「それだけ楽しかったんだね」「また明日も遊ぼうね」と受け止めつつ、気持ちの切り替えを助けます。
保護者の方も「おうちに帰ったら○○しようね」と未来に楽しみをつなげる声かけが効果的です。

夕方の園庭で、帰りたくない子を優しくなだめる保育士と保護者。夕日が差し込むあたたかな雰囲気。

「ちょっと相談いいですか?」— 夕方は意外と忙しい時間

「今日ちょっと相談があるんですけど…」というお声がけは、保育士にとってとても嬉しいものです。信頼してもらえている証拠だからです。
しかし、夕方の時間帯は思いのほか慌ただしく、十分に時間を取るのが難しいことがあります。

なぜ“夕方の相談”が難しいのか

閉園前は職員の人数が減り、延長保育の子どもの対応や掃除、事務作業などが重なります。
そのため、じっくり話を聞く余裕がない場合には「後日あらためて」とお願いせざるを得ません。
保育士としても「きちんと向き合って聞きたかったのに」と申し訳なさを感じる瞬間です。

話しやすいタイミングの作り方

園によっては“面談日”や“電話相談時間”を設けている場合もあります。「後日、少しお時間をいただけますか?」と事前に伝えていただけると、保育士側も準備ができます。
子どもの発達や家庭での様子など、深い話題ほど、落ち着いた時間を選ぶのがおすすめです。

保育室の隅で、夕方の光の中短く話す保育士と保護者。落ち着いた雰囲気の室内。

「きょう、だれと遊びました?」— 全員の様子を一度には伝えきれない

お迎え時によく聞かれる質問のひとつが「今日はだれと遊んでいましたか?」というものです。
お子さんの交友関係や園での過ごし方を知りたいという親心、よくわかります。
しかし夕方の対応時間は短く、複数の保護者への引き渡しが重なるため、丁寧に答えられないことも多いのです。

保育士が見ている「子どもの一日」

保育士はクラス全員の活動を見守っていますが、常に全員の細かな行動を把握しているわけではありません。特に自由遊びの時間は、担任以外の保育士が対応していることもあり、情報が限られることがあります。
そんなときは「今日も砂場で夢中になっていました」「お友だちとごっこ遊びをして笑っていました」など、見えている範囲でお伝えします。

情報共有の工夫

園によっては日誌やアプリで活動内容を共有しているところもあります。
「聞きたいことリスト」を連絡帳に書いておくと、翌日担任がゆっくり返せるのでおすすめです。
お互いのやり取りを通して、園と家庭での成長を一緒に見守る関係が築けます。

保育室の前で、保護者と話す保育士。後ろで帰り支度をする子どもたちが見える明るい夕方の園。

「連絡帳、まだ見てません!」— 情報共有のタイミングがずれるとき

連絡帳は、園と家庭をつなぐ“もうひとつの橋”のような存在です。
その日の出来事や体調の変化、気づきを書き留めておくことで、次の日の保育にも活かすことができます。

忙しい保護者にありがちなすれ違い

夕方は家に帰ってからもごはん・お風呂・寝かしつけと時間との戦い。
「読む時間がなくて、翌朝やっと目を通しました」という声もよく聞きます。
保育士としては、「今日のことを知ってもらいたい」「次の日に活かしてほしい」という思いから、ついお迎え時に確認をお願いすることもあります。

連絡帳・アプリの活用ポイント

最近はスマホアプリでのやり取りが主流になってきています。
文字のやり取りだけでなく、写真や短文メッセージで保育の様子を共有できる園も増えました。
「読んだよ」「ありがとう」と一言返信するだけでも、保育士は安心します。小さなやり取りの積み重ねが信頼関係につながります。

保育園玄関で連絡帳を渡す保育士と保護者。穏やかな表情でやり取りする様子。

「まだおしゃべりしたい!」— 子どもの切り替えを助けるコツ

お迎え時は、子どもが「保育園モード」から「家庭モード」に切り替える時間です。
保育士としては、子どもが嬉しそうに保護者の顔を見る瞬間が一番のご褒美。
けれど、中にはテンションが上がってしまい、なかなか帰ろうとしない子もいます。

“嬉しいスイッチ”の扱い方

子どもにとってお迎えは特別な時間。「ママ来た!」「パパだ!」と気持ちが一気に高ぶります。
そんな時は、急かすよりも「おうちで続きをしようね」「靴は自分で履けるかな?」と次の行動につなげる声かけが効果的。
子どものペースを尊重しつつ、切り替えを促す言葉がけがポイントです。

保育士と保護者の連携が大切

お迎え時に子どもが泣いたり甘えたりするのは、安心できる証拠です。
保育士が「今日も元気に過ごしましたよ」と伝え、保護者が「ありがとう」と応える。
そんな一瞬のやり取りの積み重ねが、子どもの心を安定させます。

お迎えに来た保護者に嬉しそうに駆け寄る子ども。夕方の光が差し込む玄関前の温かな光景。

保育士のほんね:お迎え時間は“感謝と連携”の瞬間

一日の終わりに感じる保育士の思い

保育士にとってお迎えは「今日も無事に過ごせた」という安堵と、「また明日もがんばろう」という励みの時間です。
「いつもありがとうございます」「先生もお疲れさまです」そんな言葉をかけていただけるだけで、疲れがふっと和らぎます。

困るけれど、嫌なわけじゃない

“困ってしまう”お迎え時の出来事は、決して保護者を責めたいわけではありません。
むしろ、保育士も「どうすればうまく伝えられるかな」と悩んでいます。
保護者と子ども、そして保育士が同じ方向を向いて協力することこそ、保育現場で最も大切にされていることです。

夕暮れの保育園玄関で、保育士が親子を笑顔で見送る後ろ姿。オレンジ色の光に包まれたやさしい情景。

お迎えの時間は、1日の締めくくりであり、園と家庭の架け橋でもあります。
保育士も保護者も、子どもの笑顔を守るために同じ気持ちで関わっています。
少しの思いやりと声かけで、きっとお互いの心がぐっと近づくはずです。

お迎え時のやり取りを通して、子どもが「大切にされている」と感じられる関係づくりを一緒に考えていきましょう。

・・・今日も一日ちはるびより

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