「うちの子、まだ指しゃぶりをしているんです」
「もう3歳になるのに、なかなかやめられなくて……」
保育園でも、指しゃぶりについて心配する保護者の方がいらっしゃいます。
赤ちゃんのころは、指をしゃぶる姿もかわいらしく感じていたのに、子どもが大きくなるにつれて、
「指しゃぶりはいつまで続くの?」
「歯並びが悪くならない?」
「無理にでもやめさせた方がいいの?」
と気になってきますよね。
でも、小さな子どもにとって、指しゃぶりは単なる癖とは限りません。
眠いときや不安なとき、自分を落ち着かせるための大切な行動になっていることもあります。
実は、わが家の下の娘にも、なかなか手放せないものがありました。
それは、小さなミニタオル。
いつも持ち歩いては口にくわえ、小学校に上がってからもしばらく、家ではそのタオルをしゃぶっていたのです。
今思い返してみると、あの小さなタオルは、娘にとって安心できる特別なものだったのでしょう。
この記事では、指しゃぶりが続く理由、年齢ごとの見守り方、無理なくやめるための関わり方を、保育士としての視点と母親としての経験を交えながらお伝えします。

指しゃぶりはなぜするの?子どもにとっての大切な意味
指しゃぶりというと、赤ちゃんの姿を思い浮かべる方が多いと思います。
でも、1歳、2歳、3歳になっても指しゃぶりをする子はいます。
そして、指をしゃぶる理由も一人ひとり違います。
赤ちゃんの指しゃぶりは自然な行動
赤ちゃんには、生まれながらに口で吸う働きが備わっています。
母乳やミルクを飲むために必要な働きですが、成長するにつれて、自分の手や指を口に持っていく姿が見られるようになります。
自分の手を見つめたり、口へ運んだりすることも、体の感覚を確かめる経験の一つです。
そのため、赤ちゃんが指しゃぶりをしていても、すぐにやめさせようとする必要はありません。
眠いときや疲れたときに指をしゃぶる
保育園で子どもたちを見ていると、指しゃぶりをするタイミングには特徴があることがあります。
たとえば、お昼寝の前。
それまで元気に遊んでいた子が、布団に横になると自然に指を口に持っていくことがあります。
また、遊び疲れたときや、静かに過ごしているときに指しゃぶりをする子もいます。
指を吸うことで気持ちが落ち着き、眠りにつきやすくなることがあるのです。
不安や緊張を感じたときの安心につながることも
進級して新しい保育室になったとき。
いつもの先生がいないとき。
初めての行事に参加するとき。
そんな場面で、普段より指しゃぶりが増える子もいます。
子どもは自分の気持ちを十分に言葉で伝えられないことがあります。
「ちょっと不安だな」
「いつもと違うな」
そんな気持ちを、自分なりの方法で落ち着かせているのかもしれません。
ただし、指しゃぶりをしているからといって、必ず不安があるとは限りません。
習慣として続いている場合もあります。
大切なのは、指しゃぶりだけを見るのではなく、普段の生活や子どもの表情も一緒に見てあげることです。
子どもが安心を求める気持ちは、指しゃぶりだけでなく、言葉や行動にも表れます。「今日お迎え来る?」と何度も聞く子どもの気持ちについては、こちらの記事でも紹介しています。
指しゃぶりは何歳まで?年齢別の見守り方
保護者の方が気になるのは、やはり「いつまでなら大丈夫なの?」ということだと思います。
指しゃぶりは、年齢によって考え方が少し変わります。
0歳から2歳ごろは自然な成長の姿として見守る
乳児期の指しゃぶりは、発達の過程でよく見られる行動です。
1歳、2歳になっても、眠る前や気持ちを落ち着かせたいときに指をしゃぶることがあります。
この時期は、無理にやめさせることよりも、安心して生活できることを大切にしたいですね。
外遊びや室内遊びを楽しむ。
親子で触れ合う。
絵本を読んでもらう。
そんな日常の経験が増える中で、自然と指しゃぶりの時間が減っていく子もいます。
3歳ごろは頻度や場面を見ながら少しずつ
3歳ごろになると、友だちとの遊びも広がってきます。
積み木やお絵描き、ごっこ遊びなど、手を使って夢中になる活動も増えていきます。
遊んでいる間は指しゃぶりを忘れているのに、お昼寝の前だけは続いているという子もいます。
日本小児歯科学会では、全体として3歳ごろまでは指しゃぶりを特に禁止する必要はないとしています。
ただし、3歳になれば何も気にしなくてよいという意味ではありません。
指しゃぶりの時間や吸う強さ、歯並びの状態などを見ながら、少しずつ関わり方を考えていきましょう。
4歳以降も頻繁に続く場合は歯科で相談を
4歳を過ぎても頻繁に指しゃぶりが続く場合には、歯並びやかみ合わせへの影響に注意が必要です。
日本小児歯科学会でも、4歳以降に頻繁な指しゃぶりが続く場合は専門家による積極的な対応が必要としています。
「もう4歳なのに」と叱る必要はありません。
小児歯科でお口の状態を確認してもらいながら、家庭でできることを相談すると安心です。

わが家の下の娘はミニタオルが手放せませんでした
指しゃぶりのことを考えると、私は今でも下の娘の小さかったころを思い出します。
わが家の下の娘には、いつも手放せないものがありました。
それが、ミニタオルです。
小さなタオルを持っては、口にくわえてしゃぶっていました。
そして、その習慣はなかなかなくなりませんでした。
小学校に上がってからも、しばらくは家でミニタオルをしゃぶっていたのです。
今振り返ると、あのタオルは娘にとって特別なものだったのだと思います。
大人から見れば、どこにでもある小さなタオル。
でも、子どもにとっては、そうではないことがあります。
お気に入りのぬいぐるみ。
いつも抱えて眠る毛布。
手放せない小さなタオル。
子どもには、自分だけの大切なものがあるのですね。
心理学では、子どもが安心を得るために大切にするタオルやぬいぐるみなどを「移行対象」と呼ぶことがあります。
もちろん、娘のミニタオルが心理学的にどのような意味を持っていたのか、はっきりしたことは分かりません。
それでも、あのタオルを口にしている娘の姿を思い出すと、子どもにとって安心できるものの存在は、大人が考える以上に大きいのかもしれないと感じます。
保育士として子どもたちと関わる中でも、そんなことを思う場面があります。
ただし、タオルを持つことと指を吸うことは同じではありません。
指しゃぶりには歯並びへの影響があり、タオルを口にする場合には清潔さや布の傷み、ほつれなどへの注意も必要です。
安心できるものを大切にする気持ちと、安全や健康への配慮は、どちらも忘れずにいたいですね。
指しゃぶりを無理なくやめるために家庭でできる5つのこと
「そろそろ指しゃぶりを卒業してほしい」
そう思ったとき、家庭ではどんなことができるのでしょうか。
大切なのは、指しゃぶりをするたびに注意することではなく、子どもが別の方法でも安心できるように関わることです。
① 指しゃぶりをするタイミングを観察する
まずは、どんなときに指をしゃぶっているのか、少し見てみてください。
眠る前だけなのか。
テレビを見ているときなのか。
疲れたときなのか。
慣れない場所へ行ったときなのか。
タイミングが分かると、子どもに合った関わり方も見つけやすくなります。
「また指をしゃぶっている」と注意する前に、何かきっかけがあるのかな、と考えてみましょう。
② 手を使う楽しい遊びを増やす
指しゃぶりをしている子でも、何かに夢中になっている間は指を口に持っていかないことがあります。
積み木。
粘土。
お絵描き。
パズル。
ままごと。
こうした遊びは、自然に手を使う時間を増やしてくれます。
ただし、指しゃぶりをやめさせるためだけに遊ばせる必要はありません。
子どもが心から楽しいと思える時間を増やすことが大切です。
③ 寝る前に安心できる習慣を作る
眠る前は、指しゃぶりをしやすい時間の一つです。
そんなときは、親子で絵本を読んだり、手をつないだりしてみてください。
「今日も楽しかったね」
「おやすみ」
そんな短い会話でも構いません。
毎日繰り返すことで、指しゃぶり以外にも安心できる方法が少しずつ増えていくかもしれません。
④ 無理に叱ったり、恥ずかしがらせたりしない
「赤ちゃんみたい」
「もう大きいんだから」
という言葉は、できるだけ避けたいですね。
本人も、やめたいと思っているのに、無意識に指を口に持っていくことがあります。
強く叱られたり、恥ずかしい思いをしたりすると、かえって気持ちが不安定になる場合もあります。
「指しゃぶりをしていること」だけに注目しすぎないようにしたいものです。
⑤ 少しずつできたことを喜ぶ
「今日は寝る前に絵本を読んで過ごせたね」
「お絵描き、楽しかったね」
そんな何気ない言葉でも十分です。
指しゃぶりをしなかったことを毎回確認するよりも、楽しく過ごせた時間や、子どもの成長そのものを喜んであげましょう。
指しゃぶりの卒業を目指す場合も、その子に合った進め方を小児歯科で相談できます。

保育園で指しゃぶりをする子にはどう関わっている?
保育園でも、指しゃぶりをする子はいます。
登園したばかりのとき。
お昼寝の前。
静かに絵本を見ているとき。
少し疲れているとき。
その子によって、指を口に持っていく場面は違います。
指しゃぶりだけを見ず、その子の様子を見ます
保育士として大切にしたいのは、「指しゃぶりをしている」という行動だけを見るのではなく、その子の様子をよく見ることです。
眠いのかな。
少し疲れているのかな。
何か気になることがあるのかな。
そんなふうに考えながら、子どもに関わります。
もちろん、外遊びの後や手が汚れているときには、清潔にすることも必要です。
ほかの子と比べないことも大切
同じクラスでも、指しゃぶりを卒業する時期は違います。
「○○ちゃんはもうしていないよ」
「赤ちゃんみたいだよ」
そんな言葉で比べられると、子どもは悲しい気持ちになることがあります。
子どもには、それぞれの育ち方があります。
ほかの子と比べて焦るより、その子自身の変化を見守っていきたいですね。
家庭と保育園で様子を伝え合う
家では指しゃぶりをしているけれど、保育園ではほとんど見られない子もいます。
反対に、園で緊張したときに指しゃぶりをする子もいます。
保護者の方が気になっている場合は、担任の先生に伝えてください。
「家では寝る前によく指をしゃぶります」
「最近、少し増えたように感じます」
そんな情報があると、園でも子どもの様子をより丁寧に見ることができます。
指しゃぶりが歯並びに与える影響とは?
指しゃぶりで特に気をつけたいのが、歯並びやかみ合わせへの影響です。
長く、強く指を吸う習慣が続くと、前歯や顎に力がかかり、歯の位置やかみ合わせに影響することがあります。
前歯が出たり、かみ合わなくなったりすることも
長期間の指しゃぶりでは、上の前歯が前へ出たり、上下の前歯の間にすき間ができたりする場合があります。
こうした状態は、食べ物を前歯でかみ切ることや、口の機能にも影響することがあります。
ただし、指しゃぶりをする子が必ず歯並びに問題を抱えるわけではありません。
吸う強さや頻度、習慣が続いた期間などによっても違います。
こんなときは小児歯科に相談しましょう
4歳以降も頻繁に指しゃぶりが続いている場合や、前歯のかみ合わせが気になる場合は、小児歯科で相談してみましょう。
また、指の皮膚が傷ついたり、強く荒れたりしている場合は、皮膚の状態についても医療機関で相談すると安心です。
大切なのは、子どもを怖がらせず、必要なときに専門家の力を借りることです。
「歯医者さんに怒られるよ」ではなく、
「歯を大切にするために、先生に見てもらおうね」
と伝えてあげたいですね。
小学生になっても指しゃぶりが続く場合は?
小学校に上がるころには、指しゃぶりをしなくなっている子も多くなります。
それでも、家庭でだけ続いている子もいます。
外ではしなくても、家に帰ってほっとすると、指を口に持っていくことがあるのです。
私の下の娘も、小学校に上がってからしばらく、家ではミニタオルをしゃぶっていました。
今になって思えば、娘にとって家は、安心して自分らしく過ごせる場所だったのかもしれません。
ただし、指しゃぶりが小学生になっても続いている場合には、自然にやめるのを待つだけでなく、小児歯科で相談することが大切です。
お口の状態を確認してもらいながら、子どもの気持ちにも配慮した方法を考えていきましょう。
指しゃぶりで悩んでいるお母さん・お父さんへ
子どもの癖は、一度気になり始めると、どうしても目につくものです。
「また指をしゃぶっている」
「何度言ってもやめない」
そう思ってしまうこともあるでしょう。
でも、指しゃぶりをしていることだけで、その子の心の状態や親子関係を判断することはできません。
子どもには、自分なりの安心の方法があります。
抱っこしてもらうと落ち着く子。
お気に入りのぬいぐるみを持ちたがる子。
タオルを手放せない子。
指しゃぶりをする子。
子どもによって、それぞれ違います。
だからこそ、まずはその子の気持ちを大切にしてあげたいですね。
もちろん、成長に伴ってやめる必要のある習慣もあります。
大切なのは、無理に取り上げたり叱ったりすることではなく、安全や健康にも配慮しながら、安心して次の一歩へ進めるようにすることです。

まとめ|指しゃぶりは子どもの安心を大切にしながら卒業へ
指しゃぶりは、小さな子どもによく見られる行動です。
特に乳児期から3歳ごろまでは、自然な発達の過程として見られることもあります。
一方で、4歳以降も頻繁に続く場合や、歯並び・かみ合わせに変化が見られる場合には、専門家への相談が大切です。
わが家の下の娘が、いつも小さなミニタオルを口にしていたこと。
小学校に上がってからもしばらく、家ではその習慣が続いていたこと。
今でも懐かしい思い出です。
子どもが大切にしているものには、大人には分からない意味があるのかもしれません。
指しゃぶりも、お気に入りのタオルも、子どもが安心を求める姿の一つとして見られることがあります。
その気持ちを受け止めながら、必要なときには周囲の大人がそっと手を添えてあげたいですね。
急がず、比べず、その子の成長に合わせて。
子どもが少しずつ自分の力で次の一歩を踏み出していけるように、温かく見守っていきましょう。
・・・今日も一日ちはるびより

