自分でできるのに「やって!」と言う子ども|甘える理由と自立を促す関わり方を保育士が解説

自分で靴を履ける幼児が母親に手伝ってもらっている様子

「ママ、靴履かせて!」

「お洋服、着せて!」

「ごはん食べさせて!」

昨日まで自分でできていたことなのに、今日は何でも「やって!」。

朝の忙しい時間にこんなことが続くと、

「自分でできるでしょう?」

「もうお兄ちゃんなんだから」

と、つい言いたくなりますよね。

保育園でも、同じような場面はよくあります。

自分で靴を履ける子が、先生に足を差し出して「やって」と言う。

いつもは一人で着替えている子が、今日は先生のそばに座って動こうとしない。

そんな姿を見ると、私は「今日はちょっと甘えたい気分なのかな」と思うことがあります。

子どもが「やって!」と言うのは、必ずしも自分でできないからではありません。

自分でできることと、自分でやりたい気持ちになることは別なのです。

大切なのは、甘えを無理にやめさせることではなく、子どもの気持ちを受け止めながら、自分でやってみようと思える場面を少しずつ増やすことです。

この記事では、自分でできるのに「やって!」と甘える理由や、1歳・2歳・3歳の子どもの特徴、忙しい朝にも取り入れやすい関わり方を、保育士の目線から具体的にお伝えします。

保育園で保育士に着替えを手伝ってもらう幼児

自分でできるのに「やって!」と言うのはなぜ?

子どもが「やって!」と言うと、大人はつい「できるのに、どうして?」と考えてしまいます。

でも、子どもの側にはいろいろな理由があります。

大好きな人に甘えたい

一番身近な理由は、やはり「甘えたい」という気持ちです。

たとえば、靴を自分で履ける3歳の子がいたとします。

昨日は自分で履いていたのに、今日はお母さんの前に座って、

「履かせて」

と言います。

その子は、靴の履き方を忘れたわけではありません。

「今日はママに履かせてほしい」

そんな気持ちなのかもしれません。

子どもにとって、身近な大人に何かをしてもらうことは、単なるお世話ではありません。

自分のことを見てもらえる。

そばにいてもらえる。

優しく触れてもらえる。

そんな安心感につながることもあります。

保育園で一生懸命がんばっている

保育園では、子どもたちなりに毎日たくさんのことを経験しています。

友だちと遊ぶ。

順番を待つ。

自分で着替える。

先生の話を聞く。

集団生活の中では、家庭とは違うエネルギーを使う場面がたくさんあります。

園では自分で身の回りのことをしている子が、家庭では何でもお母さんにしてほしがることもあります。

「保育園ではできるのに、家ではどうして?」

と感じるかもしれませんが、家庭だからこそ甘えられるということもあるのです。

疲れていたり眠かったりする

大人でも疲れている日は、普段簡単にできることがおっくうに感じられますよね。

子どもも同じです。

眠い朝。

たくさん遊んだ夕方。

体調がすぐれない日。

そんな日は「自分でする」より「やってもらいたい」気持ちになることがあります。

特に、いつもと違って急に甘えが増えたときは、疲れや体調の変化がないかも見てあげたいところです。

うまくできるか不安になっている

以前はできたことでも、失敗した経験があると「またできないかも」と感じる場合があります。

ボタンがなかなか留められなかった。

靴がうまく履けなかった。

服が裏返しになってしまった。

そんな経験から、自分ですることに少し消極的になる子もいます。

「やって!」という言葉の中に、「手伝ってほしい」「失敗したくない」という気持ちが隠れていることもあります。

保育園から帰宅した子どもが母親に甘えて抱っこされる様子

甘えることは悪いことではありません

「こんなに甘えさせていたら、何も自分でしなくなるのでは?」

そんな心配をする保護者の方もいるでしょう。

確かに、子どもが自分でできることをすべて大人が先回りしてしまうと、自分で試す機会が少なくなってしまいます。

でも、だからといって甘えを全部断る必要はありません。

大切なのは、甘えたい気持ちを受け止めることと、自分でやってみる機会をつくることの両方です。

たとえば、

「今日はママに履かせてほしいんだね」

と気持ちを受け止めたあとで、

「じゃあ、片方はママが履かせるね。もう片方はどうする?」

と聞いてみる。

それだけでも、子どもが自分で選べる余地が生まれます。

甘えを受け止めることと、自立を助けることは、反対のものではありません。

子どもが「やって!」と言ったとき、全部手伝ってあげる日があっても、すぐに自分でできるようになるわけではないからと心配しすぎなくて大丈夫です。

大切なのは、「甘えてもいいんだよ」という安心感と、「自分でもやってみようかな」という気持ちの両方を育てることです。

子どもをありのまま受け止めることについては、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。

保育室で、夕方のやわらかな光の中、子どものそばに保育士が同じ目線で寄り添い、安心した時間を共有している様子 「そのままでいい」を、子どもにどう伝える?自己肯定感の土台の話

1歳・2歳・3歳で「やって!」の意味は少し違います

同じ「やって!」という言葉でも、年齢や発達によって背景は異なります。

1歳|まだ大人の手助けが必要な時期

1歳ごろは、身の回りのことを自分でしようとする気持ちが芽生え始める時期です。

靴下を引っ張る。

スプーンを持つ。

ズボンに足を入れようとする。

そんな小さな挑戦が見られます。

でも、思うように手や体を動かせないことも多く、まだ大人の手助けが必要です。

「やって!」と求められたら、必要なところを手伝いながら、子どもがやってみようとした部分を大切にしてあげましょう。

2歳|「自分で!」と「やって!」を行ったり来たり

2歳ごろは、自分でしたい気持ちが強くなってくる時期です。

昨日は「自分で!」と言っていたのに、今日は「やって!」。

大人から見ると矛盾しているようですが、子どもにとってはどちらもそのときの素直な気持ちです。

「自分でしたい」ときには見守る。

「手伝ってほしい」ときには少し助ける。

その日の気持ちに合わせて関わることが大切です。

3歳|できることが増えるからこそ甘えたい日も

3歳ごろになると、靴を履いたり、衣服を着替えたり、自分でできることがさらに増えてきます。

周囲の大人からも、

「もうできるでしょう」

と言われる場面が増えるかもしれません。

でも、できることが増えたからといって、甘えたい気持ちがなくなるわけではありません。

自分でできることが増えているからこそ、安心できる大人には甘えたいということもあります。

成長している姿と甘えている姿、どちらもその子の大切な姿です。

「やって!」と言われたときに試したい5つの関わり方

それでは、家庭ではどのように関わればよいのでしょうか。

大切なのは、「全部やってあげる」か「全部自分でさせる」かの二択にしないことです。

1.まず気持ちを受け止める

「やって!」と言われたら、まずは、

「今日はやってほしいんだね」

と声をかけてみましょう。

忙しいときには難しいこともありますが、気持ちを言葉にしてもらうだけで落ち着く子もいます。

「自分でできるでしょう!」

とすぐに返すより、子どもの気持ちを確かめるところから始めてみてください。

2.少しだけ手伝う

全部してあげる必要はありません。

靴なら片方だけ。

ボタンなら最初の一つだけ。

ズボンなら足を入れるところだけ。

そんなふうに、少し手伝ってから子どもに任せる方法があります。

「ここまでは先生がするね」

「続きはどうする?」

と声をかけると、自分でやってみようとする子もいます。

3.一緒にやってみる

「自分でやりなさい」と言われると嫌がる子でも、

「一緒にやってみようか」

と言われると動き始めることがあります。

たとえば着替えなら、

「よーい、どんで一緒に着てみよう」

と遊びのようにしてみる。

ただし、競争が苦手な子には無理に急がせず、その子が楽しめる方法を選びましょう。

4.できたことを具体的に伝える

子どもが少しでも自分でできたら、その姿を言葉にしてあげましょう。

「靴に足を入れられたね」

「最後のボタン、自分で留めたね」

「今日はここまでやってみたんだね」

大げさに褒める必要はありません。

自分がしたことを大人が見てくれている。

その経験が、次の「やってみよう」につながることがあります。

「できたね」という言葉も素敵ですが、結果だけではなく、やってみた過程を見てあげることも大切です。

「最初は難しかったけれど、自分でやってみたね」

「先生と一緒に最後までできたね」

そんな言葉が、次の挑戦への意欲につながることがあります。

子どもの小さな成功体験が自信につながる様子については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

積み木を積み上げて振り返りながら嬉しそうに笑う幼い子どもの様子を、自然光の室内で撮影した写真。 「できた!」の笑顔が子どもの自己肯定感を育てる理由|保育士が見た成長の瞬間

5.甘える日があってもよいと考える

今日は全部やってほしい。

そんな日もあります。

保護者の方に余裕があるなら、たまには全部してあげてもよいと思います。

「今日は特別ね」

と言いながら靴を履かせてあげる。

それで子どもが安心することもあります。

毎回同じ対応をしなければいけないわけではありません。

子どもの様子と家庭の状況に合わせて、無理のない関わり方を選んでください。

母親に見守られながら自分で靴を履こうとする3歳児

朝の忙しい時間に「やって!」と言われたら

ここまで読んで、

「ゆっくり関わりたいけれど、朝はそんな余裕がありません」

と思った方もいるかもしれません。

本当にそうですよね。

仕事へ行く準備。

朝食。

着替え。

保育園への送迎。

忙しい朝に「やって!」が続くと、時間だけが過ぎてしまいます。

そんなときは、自立の練習を優先しなくても大丈夫です。

忙しいときは手伝っても大丈夫

朝は時間に限りがあります。

「今日は急いでいるから、ママが手伝うね」

と伝えて着替えを手伝っても構いません。

自分でやってみる時間は、朝だけではありません。

休日や帰宅後など、少し時間に余裕があるときに取り組めばよいのです。

前日の準備で朝の負担を減らす

翌日の服を一緒に選んでおく。

靴下を決まった場所に置いておく。

通園バッグを準備しておく。

そんな小さな準備でも、朝の慌ただしさを減らせます。

子どもが自分で取り出せる位置に服や持ち物を置くことも、自分でやってみるきっかけになります。

「急いで!」よりも見通しを伝える

「早くして!」

と言いたくなるときもありますが、

「お着替えしたらごはんにしようね」

「靴を履いたら出発だよ」

と次の行動を具体的に伝える方が分かりやすい子もいます。

ただし、まだ時間の見通しを持つことが難しい年齢では、大人の手助けも必要です。

保育園ではできるのに家庭で甘えるのはなぜ?

保護者の方から、

「先生、うちの子は園でも自分で着替えていますか?」

と聞かれることがあります。

園での様子を伝えると、

「えっ、家では全然しないんですよ」

と驚かれることもあります。

でも、家庭と保育園で違う姿を見せることは珍しくありません。

保育園では友だちの姿が刺激になる

保育園では、周りに同じ年齢の子どもたちがいます。

友だちが靴を履いている。

隣の子が着替えている。

そんな姿を見て、自分もやってみようと思うことがあります。

友だちの姿が、自然な刺激になるのです。

家庭は安心して甘えられる場所

一方、家庭では大好きなお父さんやお母さんがいます。

園では自分で頑張っていても、家では甘えたくなる。

そんな姿は、家庭が安心できる場所であることの表れかもしれません。

「保育園ではできるのに、どうして家ではしないの?」

と比べるより、

「園ではそんなこともできるようになったんだね」

と成長を喜んであげたいですね。

自分で着替えができて笑顔を見せる幼児と保育士

自立を促したいときに気をつけたい言葉

子どもの自立を願うからこそ、つい言ってしまう言葉があります。

「もう赤ちゃんじゃないでしょう」

「そんなこともできないの?」

「○○ちゃんはできるのに」

こうした言葉は、大人が思っている以上に子どもの気持ちに残ることがあります。

特に、友だちや兄弟と比較する言葉は避けたいところです。

子どもの成長には個人差があります。

同じ年齢でも、できることや取り組む意欲は違います。

「できるかどうか」だけではなく、「やってみようとしているか」「どこに困っているか」に目を向けることが大切です。

また、自分でできていたことを急にしなくなった場合は、生活環境の変化や疲れ、体調なども関係しているかもしれません。

甘えが長く続いたり、睡眠や食事、園生活にも大きな変化が見られたりするときは、保育士やかかりつけの小児科などに相談してみてください。

子どもの「やって!」には成長のきっかけが隠れています

子どもの「やって!」は、大人を困らせるための言葉とは限りません。

「そばにいてほしい」

「少し手伝ってほしい」

「今日は甘えたい」

そんな気持ちを伝えていることがあります。

一方で、毎日の生活の中で少しずつ自分でできることを増やしていくのも大切です。

そのためには、

全部してあげるのでもなく、

全部突き放すのでもなく、

今の子どもに必要な手助けをしながら、できる部分を本人に任せていくことが大切なのだと思います。

そして、もう一つ大切にしたいのは、「自分でできること」だけが自立ではないということです。

本当に困ったときに、

「手伝って」

「教えて」

「一緒にやって」

と周囲に伝えられることも、子どもが成長していく上で大切な力です。

自分でできることを増やしながら、困ったときには安心して誰かを頼れる。

そんな子どもに育ってほしいですね。

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まとめ|甘えを受け止めながら「自分でできた」を増やしていきましょう

自分でできるのに「やって!」と言う子ども。

毎日のこととなると、保護者の方も困ってしまいますよね。

でも、子どもが甘えるのには、その子なりの理由があるのかもしれません。

疲れている日。

不安な日。

大好きな人にそばにいてほしい日。

そんな気持ちを受け止めながら、できるところは少しずつ子どもに任せていきましょう。

昨日は全部手伝ってもらったけれど、今日は片方の靴を自分で履いた。

昨日は着替えを嫌がったけれど、今日は自分で袖に腕を通した。

そんな小さな変化でも、立派な成長です。

「自分でできるでしょう」と急がせるより、

「ここまでできたね」

「一緒にやってみようか」

と声をかけてみる。

そして、ときには思い切り甘えさせてあげる。

子どもが安心できる関係の中で、自分でやってみようとする気持ちを育てていけたらいいですね。

・・・今日も一日ちはるびより