子どもが話を最後まで聞けないのはなぜ?保育士が教える1~3歳への声かけと関わり方

保育士が幼児の目線に合わせて優しく話しかけている様子

「何度言っても聞いてくれない」

「話している途中でどこかへ行ってしまう」

「最後まで聞いてから動いてほしいのに……」

1歳、2歳、3歳くらいの子どもと過ごしていると、こんなふうに感じることがありますよね。

朝の支度をしているとき。

おもちゃを片付けてほしいとき。

お出かけ前に準備をしてほしいとき。

こちらは一生懸命説明しているのに、子どもは途中で別のことを始めてしまう。

そんな姿を見ると、

「ちゃんと聞く習慣をつけないといけないのかな」

「うちの子だけ落ち着きがないのかな」

と心配になることもあるかもしれません。

でも、保育園で子どもたちを見ていると、小さな子どもが大人の話を最初から最後まで聞くことは、思っている以上に難しいことだと感じます。

話を聞く力は、

「聞きなさい」

と何度も言えば身につくものではありません。

言葉の理解。

興味。

集中できる時間。

今している遊び。

その日の気分。

いろいろなものが関係しています。

この記事では、1歳から3歳くらいの子どもが話を最後まで聞けない理由と、家庭で取り入れやすい伝え方を、保育士の目線からお伝えします。

遊びながら保護者の話を聞く幼児

子どもが話を最後まで聞けないのは珍しいことではありません

大人同士であれば、相手が話している間は待って聞くことができます。

でも、小さな子どもはまだその途中です。

特に乳幼児期は、目の前にあるものや、その瞬間に興味を持ったものへ気持ちが向きやすい時期です。

たとえば、

「おもちゃを片付けたら、手を洗って、それからごはんにしようね」

と伝えている途中で、床に落ちている別のおもちゃを見つけたら、そのおもちゃに意識が移ってしまうことがあります。

大人から見ると、

「話を聞いていない」

ように見えます。

でも子どもの中では、話を無視しているというより、目の前の刺激に気持ちが動いてしまっていることも多いのです。

「聞く力」は少しずつ育っていきます

話を聞くためには、耳で音を聞くだけでは足りません。

言葉を理解する。

相手に注意を向ける。

話の内容を覚えておく。

今していることを一度止める。

そのあと行動に移す。

これだけのことを同時に行っています。

私たち大人は何気なくしていますが、小さな子どもにはかなり難しいことです。

そのため、年齢が小さいほど、

「長く説明する」

よりも、

「短く、分かりやすく伝える」

ことが大切になります。

1歳・2歳・3歳では「聞ける長さ」も違います

子どもの成長には個人差がありますが、年齢によって話の受け取り方にも違いがあります。

1歳ごろは短い言葉で伝える

1歳ごろは、簡単な言葉を少しずつ理解していく時期です。

「おいで」

「ないないしよう」

「おてて洗おう」

など、日常の中で何度も使う言葉は分かるようになっていきます。

この時期に、

「もうごはんの時間だから、おもちゃを片付けて、そのあと手を洗って椅子に座ってね」

と長く話しても、全部を理解するのは難しいでしょう。

「おもちゃ、ないないしよう」

まずはそれだけ。

できたら、

「次はおてて洗おう」

と、一つずつ伝えていく方が分かりやすいです。

2歳ごろは分かっていても今していることをやめにくい

2歳ごろになると、理解できる言葉がどんどん増えてきます。

こちらが言っていることを、かなり分かっているように感じる場面もあります。

それでも、

「分かっているのにしない」

ことがあります。

これは大人を困らせるためとは限りません。

まだ遊びたい。

自分で決めたい。

今していることを途中でやめたくない。

そんな気持ちが強くなる時期でもあります。

「聞いているのに動かない」

ときは、

「聞いていない」

のではなく、

「聞いたけれど、気持ちを切り替えられない」

という場合もあります。

3歳ごろは少し長い話も聞けるようになります

3歳ごろになると、会話のやり取りも増えてきます。

「今日保育園で何したの?」

「○○ちゃんと遊んだ」

など、経験したことを話せる子も増えてきます。

一方で、大人の長い説明をいつでも最後まで聞けるわけではありません。

楽しい遊びの途中。

疲れているとき。

眠いとき。

お腹が空いているとき。

そんなときは、普段できていることでも難しくなります。

できたり、できなかったりしながら、少しずつ聞く力が育っていきます。

保育室で保育士の話を聞く1歳から3歳の幼児たち

保育園では子どもにどう話しかけている?

保育園では、一度にたくさんの子どもたちへ声をかける場面があります。

それでも、

「ちゃんと聞きなさい」

と繰り返すだけでは、なかなか伝わりません。

子どもが聞きやすくなるように、いくつか工夫をしています。

子どもの近くまで行く

部屋の反対側から、

「片付けてねー!」

と声をかけても、遊びに夢中になっている子には届かないことがあります。

そんなときは、子どものそばまで行きます。

目線を近づけて、

「もうすぐお片付けだよ」

と伝えます。

距離が近くなるだけで、こちらへ意識を向けやすくなることがあります。

先に名前を呼ぶ

いきなり話し始めるのではなく、

「○○ちゃん」

と名前を呼びます。

子どもがこちらを見てから、

「お片付けしようね」

と伝えます。

大人でも、別のことをしているときに突然話しかけられると、最初の部分を聞き逃すことがありますよね。

子どもも同じです。

まずこちらに気づいてもらうことが大切です。

一度に一つだけ伝える

小さな子どもには、

「片付けて、手を洗って、椅子に座って」

より、

「まず、おもちゃを片付けよう」

の方が伝わりやすいです。

一つできたら次へ。

この順番を繰り返しているうちに、少しずつ生活の流れそのものを覚えていきます。

「何度言ったら分かるの?」と言いたくなるとき

毎日同じことを言っていると、

「昨日も言ったよね」

「何度言ったら分かるの?」

と言いたくなる日もあるでしょう。

私も保育園で、

「さっき言ったんだけどな」

と思うことがあります。

でも、子どもにとっては、

「知っていること」

と、

「その場でできること」

は別なのだと思います。

片付けることを知っている。

靴を履くことも知っている。

お出かけの準備も知っている。

それでも、そのとき遊びに夢中なら動けないことがあります。

そんなときは、注意を重ねるより、

「赤い積み木から片付けようか」

「先生と一緒に3個入れよう」

と、最初の一歩を具体的にしてあげると動きやすくなることがあります。

子どもに伝わりやすい5つの声かけ

家庭でも簡単に取り入れられる方法があります。

1.子どものそばで話す

遠くから何度も呼ぶより、できれば近くまで行って話します。

特に遊びに集中しているときは、声だけでは気づきにくいことがあります。

2.名前を呼んでから話す

「○○ちゃん」

「なあに?」

と一度つながってから話すと、言葉が入りやすくなります。

3.短い言葉にする

「もう時間がないから、早く靴を履いて玄関に来ないと遅れちゃうよ」

ではなく、

「靴を履こう」

まずはそれだけでも十分です。

4.「してほしいこと」を伝える

つい、

「走らない!」

「触らない!」

「騒がない!」

と言いたくなります。

でも、小さな子どもには、

「歩こうね」

「ここで待とうね」

「小さい声で話そう」

のように、してほしい行動を伝える方が分かりやすいことがあります。

5.できたときに言葉にする

話を聞けたときに、

「最後まで聞いてくれたね」

「お話を聞いてからできたね」

と伝えてみてください。

大げさに褒める必要はありません。

子ども自身が、

「今のが聞くってことなんだ」

と分かるようになることが大切です。

子どものそばで名前を呼んで話しかける母親

子どもが遊んでいる途中に話すときは「予告」も役立ちます

子どもが一番聞きにくいのは、夢中で遊んでいるときかもしれません。

大人でも、好きなテレビ番組を見ている最中に、

「今すぐ片付けて」

と言われたら、少し嫌な気持ちになりますよね。

子どもも似ています。

保育園では、

「あと少ししたら片付けるよ」

「この電車が駅に着いたらおしまいにしようか」

など、次の予定を少し前に知らせることがあります。

もちろん、いつも予定通りにいくわけではありません。

それでも、突然終わらされるより、気持ちを切り替えやすくなる子もいます。

「最後まで聞いて」と言う前に大人が確認したいこと

子どもが話を聞かないとき、大人の側も少し確認してみるとよいことがあります。

話が長くなっていないかな。

一度にたくさん伝えていないかな。

子どもは今、何かに夢中ではないかな。

疲れていないかな。

眠くないかな。

こちらを見ていないうちから話し始めていないかな。

子どもだけに「聞く力」を求めるのではなく、

「どうすればこの子に伝わりやすいかな」

と考えてみると、関わり方が少し変わります。

子どもがこちらを見なくても聞いていることがあります

「ちゃんとこっちを見て」

と言いたくなることもあります。

もちろん、相手の方を見ることはコミュニケーションの一つです。

でも、小さな子どもは目を合わせていなくても、話を聞いていることがあります。

おもちゃを触りながら聞いていて、

あとになって言われた通りにすることもあります。

そのため、

「目を見ない=聞いていない」

と決めつける必要はありません。

その子がどんな聞き方をしているのか、少し様子を見てみることも大切です。

「言うことを聞く子」にすることが目的ではありません

子どもに話を聞いてほしいと思うのは自然なことです。

危険な場面では、すぐに大人の言葉を聞いてほしいこともあります。

でも、子育ての目的は、

「大人の言うことを何でも聞く子」

にすることではないと思います。

分からなければ聞き返す。

納得できなければ「いや」と言う。

自分の考えを伝える。

そうした力も大切です。

だからこそ、

「言う通りにできたか」

だけではなく、

「相手の言葉を受け取ろうとしたか」

「自分の気持ちも伝えられたか」

という部分も見てあげたいですね。

話を聞けた小さな瞬間を見つけてみましょう

子どもの「できないこと」は、とても目につきます。

でも一日の中を振り返ると、

「おいで」と言ったら来た。

「手を洗おう」と言ったら洗えた。

絵本を最後まで聞けた。

お友だちの話を少し待てた。

そんな小さな「聞けた」があるのではないでしょうか。

聞く力は、ある日突然完成するものではありません。

毎日のやり取りの中で少しずつ育っていきます。

親子で向かい合いながら会話を楽しんでいる様子

まとめ|話を最後まで聞けないのは「聞く力を育てている途中」

1歳から3歳くらいの子どもが、大人の話を最後まで聞けないことは珍しくありません。

小さな子どもは、

言葉を理解すること。

注意を向けること。

今していることを止めること。

聞いた内容を覚えて行動すること。

こうした力を少しずつ身につけている途中です。

だから、

「何度言ったら分かるの?」

と思ったときこそ、

少し近づく。

名前を呼ぶ。

短く伝える。

一つずつお願いする。

そんな小さな工夫を試してみてください。

昨日より今日。

今日より明日。

少しずつ話を聞ける場面が増えていけば、それで十分です。

子どもが話を聞く力を育てるためには、大人が話しやすくすることと同じくらい、子どもの話を大人が聞くことも大切です。

「今日こんなことがあったよ」

「ねえ、聞いて」

そんな子どもの言葉にも耳を傾けながら、一緒に「聞くこと」「話すこと」を育てていきたいですね。

・・・今日も一日ちはるびより