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「困ったときは助けを求めてほしい」と願う一方で、「自分で頑張れる子になってほしい」と思う保護者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、本当の意味での自立とは、一人で何でもできることではなく、必要なときに周囲を頼れることでもあります。
「助けて」と言える力は、子どもが安心して生きていくための大切な非認知能力のひとつです。
保育現場では、「自分でやらなきゃ」と頑張りすぎるあまり、困っていても助けを求められない子どもの姿を目にすることがあります。一方で、大人との関わりの中で「助けて」と言えるようになり、安心した表情を見せる子どもたちもたくさんいます。
今回は、保育現場でのエピソードを交えながら、子どもの頼る力を育てる声かけや環境づくりについて考えていきます。
「助けて」が言えることは、大切な生きる力
頼る力は「弱さ」ではなく「生きる力」
「自立」と聞くと、「何でも一人でできること」をイメージする方も多いかもしれません。
しかし、本当の意味での自立とは、すべてを一人で抱え込むことではありません。自分では難しいと感じたときに、「助けて」と周囲に伝え、必要な支援を受けながら問題を解決していく力も含まれています。
私たち大人も、仕事で困ったときに同僚へ相談したり、体調が優れないときに家族を頼ったりします。一人で頑張り続けることが必ずしも良いとは限りません。
子どもにとっても、「困ったときは助けを求めていい」「一人で抱え込まなくていい」と知ることは、自分を守るための大切な力になります。
この力は、幼少期だけでなく、思春期や大人になってからも必要になります。友人関係や仕事、人間関係の悩みなど、人生には誰かの支えを必要とする場面がたくさんあります。
「助けて」と言えることは弱さではなく、生きていくために必要な力なのです。
子どもの「頼る力」は非認知能力のひとつ
近年、子育てや教育の場で注目されている「非認知能力」。これは、テストの点数や学力では測れない、人と関わりながら生きていくための力を指します。
「頼る力」も、その一つです。
- 人を信頼する力
- 自分の気持ちを伝える力
- 困ったときに行動する力
- 問題解決に向けて協力する力
こうした力は、生まれつき備わっているものではなく、大人との関わりの中で少しずつ育まれていきます。
「困ったときは言っていいんだよ」「話してくれてありがとう」という経験の積み重ねが、子どもの安心感や自己肯定感につながっていくのです。

なぜ子どもは「助けて」と言えないの?
「自分でやらなきゃ」と頑張りすぎている
保育園で、制服のボタンを留めようと一生懸命頑張っていた4歳の女の子がいました。
何度挑戦してもうまくいかず、少しずつ表情が曇っていきます。
「手伝おうか?」と声をかけると、首を横に振り、「自分でやる」と小さな声で答えました。
その後も何度も挑戦し続け、最後には悔しさから涙がこぼれてしまいました。
真面目で頑張り屋さんな子ほど、「自分でできなければいけない」と感じやすいものです。
「一人でできたね」と褒めることも大切ですが、「困ったときは助けてもらっていいんだよ」というメッセージも同じくらい大切にしたいですね。

「迷惑をかけたくない」と感じている
子どもは、大人が思っている以上に周囲の様子をよく見ています。
忙しそうなお母さんや先生の姿を見て、「今は話しかけないほうがいいかな」と遠慮してしまうことがあります。
「あとでね」「今忙しいから待っていてね」という言葉が続くと、「困っていても我慢したほうがいい」と受け取ってしまう場合もあります。
もちろん、いつでもすぐに対応できるわけではありません。
そんなときは、「あとで必ず聞かせてね」「話してくれてありがとう」と伝えるだけでも、子どもの安心感につながります。
どう助けを求めればいいのかわからない
「助けて」は、自然と身につくものではありません。
「困ったときは、『手伝って』『教えて』『一緒にやって』って言っていいんだよ」と、大人が具体的な言葉を教えることが必要です。
助けを求めることも、練習しながら身につけていくコミュニケーションスキルの一つなのです。
失敗することへの不安や恥ずかしさ
「できない自分を見せたくない」と感じる子もいます。
完璧にやりたい気持ちが強い子ほど、「助けて」と言うことを恥ずかしいと感じやすい傾向があります。
「できなくても大丈夫」「失敗してもいいんだよ」という安心できる環境が、SOSを出しやすくする土台になります。
保育士として感じた「助けて」が言えた瞬間
靴が履けず涙をこらえていたAちゃん
3歳児クラスのAちゃんは、「自分で!」という気持ちが強い子でした。
ある日、外遊びへ行く準備で上履きを履いていたときのことです。
何度やってもうまく履けず、周りのお友だちは次々に園庭へ向かっていきます。
Aちゃんは黙ったまま靴と向き合い、目には涙が浮かんでいました。
「困っていたんだね。『手伝って』って言ってもいいんだよ。」
そう伝えると、少し考えた後、小さな声で「手伝って」と言ってくれました。
靴を履き終えた後、「言えてよかったね。教えてくれてありがとう」と声をかけると、安心したような笑顔を見せてくれました。
「助けて」と言えた経験そのものが、子どもの自信につながるのだと感じた瞬間でした。

友だちとのトラブルを相談できたBくん
5歳のBくんは、困っていても「大丈夫」と言うことが多い子でした。
ある日、いつもより元気がなく、一人で過ごす時間が増えていました。
そっと話を聞くと、「お友だちに嫌なことを言われた」と打ち明けてくれました。
「話してくれてありがとう。つらかったね。」
そう伝えると、Bくんの表情が少し和らぎました。
その後、一緒にどうしたらよいかを考え、気持ちを整理することができました。
「困ったときは話していいんだ」と感じられる経験が、子どもの安心感を育てていくのだと思います。

「助けて」が言える子を育てる5つの声かけ
①「困ったら教えてね」を日常的に伝える
困ったことが起きてからではなく、普段から「困ったら教えてね」「一緒に考えようね」と伝えておきましょう。
日常的に繰り返し伝えることで、「助けを求めても大丈夫」という安心感につながります。
②「助けて」と言えたことを認める
「言えてえらかったね」「話してくれてありがとう」と、助けを求めた行動そのものを認めましょう。
「自分でできなかったね」ではなく、「伝えることができたね」という視点が大切です。
③ 子どもの気持ちを否定せず受け止める
「そんなことで泣かないの」ではなく、「困っていたんだね」と共感することを大切にしましょう。
気持ちを受け止めてもらえる経験は、安心してSOSを出せる土台になります。
④ 大人自身が人を頼る姿を見せる
「お母さんもお願いしてみるね」「先生も困ったときは相談するよ」と、大人が助け合う姿を見せることも大切です。
頼ることは特別なことではなく、自然なことだと伝えられます。
⑤ 小さなSOSを見逃さない
子どもは言葉以外でもサインを出しています。
表情が暗い、急に静かになる、同じことを繰り返しているなど、小さな変化に気づき、「何か困っていることある?」と声をかけてみましょう。

「助けて」が言える子を育てるために避けたい声かけ
「それくらい自分でやって」
子どもの成長を願うあまり、「もうできるでしょ。」「自分でやってみて。」
と伝えることもあるでしょう。
もちろん、自分で挑戦する経験は大切です。
しかし、困っているサインが見えているときには、
「どこまで自分でやってみる?」「必要だったら手伝うよ。」
という関わり方も大切です。
子どもは、「自分でやること」と「助けてもらうこと」の両方を経験しながら成長していきます。
「そんなことで泣かないの」
大人から見ると小さな出来事でも、子どもにとっては大きな困りごとである場合があります。
- 友だちに嫌なことを言われた
- 工作が思うようにできない
- 靴が履けない
こうした気持ちを、「そんなことで?」と否定されると、次第にSOSを出しにくくなります。
まずは、「困っていたんだね。」「悲しかったね。」と気持ちを受け止めることを大切にしましょう。
「なんで言わなかったの?」
困っていたことを後から知ったとき、「なんで早く言わなかったの?」と思わず言ってしまうこともあるかもしれません。
でも、子どもにとって「助けて」と言うことは勇気のいることです。
そんなときは、「教えてくれてありがとう。」「話してくれてうれしいよ。」
と、伝えてくれたこと自体を認める言葉をかけてあげたいですね。
「自分でやる力」と「頼る力」はどちらも大切
自立とは「全部一人でできること」ではない
「自立」という言葉を聞くと、「何でも一人でできる子」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、本当の意味での自立とは、すべてを自分だけで抱え込むことではありません。
自分でできることには挑戦しながらも、困ったときには周囲に助けを求めることができる。そして、必要な支援を受けながら前に進んでいけることも、大切な自立の姿です。
例えば、大人でも仕事でわからないことがあれば同僚に相談したり、体調が悪いときには家族に頼ったりします。
「誰にも頼らず頑張ること」が理想なのではなく、「必要なときに適切に助けを求められること」が、生きていくうえで大切な力なのです。
子どもにも、「自分でやってみること」と「困ったら助けてもらうこと」の両方が大切だと伝えていきたいですね。
頼る経験が自己肯定感につながる
「助けて」と言えたとき、そして「大丈夫だよ」「一緒にやろう」と受け止めてもらえたとき、子どもは大きな安心感を得ます。
「困ったときは誰かが助けてくれる」「自分は一人じゃない」
そんな感覚は、自己肯定感の土台にもなります。
保育園でも、助けを求められた子どもに「教えてくれてありがとう」と伝えると、ほっとした表情を見せることがあります。
「助けてもらえた」という経験は、人への信頼感にもつながります。
そして、自分が助けてもらった経験は、将来誰かを助ける優しさにもつながっていくのです。
将来の心の健康を守る力になる
困ったときにSOSを出せる力は、子どもの心の健康を守ることにもつながります。
悩みや不安を一人で抱え込んでしまうと、心に大きな負担がかかることがあります。
しかし、「困ったら相談していい」「話を聞いてくれる人がいる」と感じられている子どもは、困難な状況に直面したときも支援を求めやすくなります。
幼少期の「助けて」と言えた経験は、思春期や大人になってからの「相談する力」の土台になります。
だからこそ、小さい頃から「一人で頑張りすぎなくていい」というメッセージを伝えていくことが大切なのです。
家庭でできる「助けて」の練習方法
「困ったら誰に相談できる?」を話し合う
家庭の中で、「困ったとき、誰に相談できるかな?」と話し合う時間を作ってみましょう。
- お父さん、お母さん
- おじいちゃん、おばあちゃん
- 保育園や幼稚園の先生
- 学校の先生
- 信頼できる親戚
頼れる大人の存在を具体的に確認しておくことで、子どもは安心感を持てるようになります。
「一人で抱え込まなくていいんだよ」と伝える機会にもなります。
親自身の「助けてもらった話」を共有する
子どもは、大人の姿を見ながら学んでいます。
「今日、お母さんも困っていたから職場の人に相談したんだ。」
「お父さんもわからないことがあって教えてもらったよ。」
そんな何気ない会話から、「頼ることは自然なことなんだ」と感じられるようになります。
「困ったら助けてもらっていい」という価値観を、大人自身が体現することも大切です。
絵本を通して「助けて」を考える
絵本は、子どもの気持ちを考えるきっかけになります。
登場人物が困っている場面で、こんな声かけをしてみましょう。
- 「この子はどんな気持ちかな?」
- 「誰に助けてもらえそうかな?」
- 「○○ちゃんだったら、どうする?」
絵本の世界を通して考えることで、「助けを求めること」を自然に学ぶことができます。
家族で「ありがとう」を伝え合う
家庭の中で助け合いが当たり前になると、「頼ること」への肯定的なイメージが育ちます。
「手伝ってくれてありがとう。」「助かったよ。」
そんな言葉が日常にあると、子どもは「助け合うことは嬉しいことなんだ」と感じられるようになります。
「頼ること」と「感謝すること」は、どちらも人とのつながりを育む大切な力です。

「助けて」と言える力は、絵本を通して親子で考えることもできます。
登場人物の気持ちに寄り添いながら、「困ったときは誰に相談できるかな?」と話し合う時間は、子どもの頼る力を育てるきっかけになります。
▶「助けて」を学べるおすすめ絵本5選はこちら
保護者自身も「助けて」と言えることが大切
子育ては一人で頑張りすぎなくていい
「ちゃんと育てなきゃ」「親なんだから頑張らないと」と、自分を追い込んでしまう保護者の方も少なくありません。
しかし、子育ては一人で完璧にできるものではありません。
実際に、保育園でもこんな声を聞くことがあります。
「もっと頑張らないといけないと思っていました。」
「誰かに相談していいなんて思っていませんでした。」
でも、保護者が誰かを頼る姿は、子どもにとって大切なお手本になります。
「お母さんも困ったときは先生に相談するよ。」
「お父さんも職場で助けてもらうことがあるよ。」
そんな言葉から、子どもは「困ったときは助けを求めていいんだ」と学んでいきます。
「助けて」が言える家庭は安心できる居場所になる
家庭の中で、
- 「どうしたの?」
- 「何か困っていることある?」
- 「一緒に考えようか」
という言葉が自然に交わされると、子どもは安心して気持ちを表現できるようになります。
「困ったときに助けてもらえた」という経験は、「自分は大切にされている」という感覚にもつながります。
そして、その安心感が、新しいことに挑戦する勇気にもなっていくのです。
保育士として感じる「助けて」が言える子の成長
保育の現場で感じるのは、「助けて」と言えるようになった子どもは、人との関わりの中で安心して過ごせるようになるということです。
以前、「できない」と言えずに何でも一人で抱え込んでいた子がいました。
しかし、
- 「手伝って」
- 「一緒にやって」
- 「先生、見て」
と少しずつ言えるようになると、表情が柔らかくなり、友だちとの関わりも増えていきました。
誰かを頼れる安心感は、「やってみよう」という挑戦する気持ちも育ててくれます。
頼ることは甘えではありません。安心して挑戦するための土台になると思います。
こんなときは専門機関への相談も検討を
極端に助けを求められない状態が続く場合
「助けて」と言えないこと自体は、子どもの個性の一つでもあります。
しかし、次のような状態が長く続く場合は、専門家へ相談することも検討してみましょう。
- 困っていても誰にも相談できない
- 強い不安を抱えている様子がある
- 「自分なんてダメ」と自己否定的な発言が多い
- 園生活や学校生活に大きな影響が出ている
一人で悩まず、周囲の大人も支援を受けることが大切です。
相談できる場所
子育ての悩みは、保護者だけで抱え込まなくて大丈夫です。
相談できる場所として、次のような機関があります。
- 保育園・幼稚園の先生
- 小学校の担任やスクールカウンセラー
- 地域の子育て支援センター
- 自治体の子育て相談窓口
- 児童相談所の相談窓口
困ったときに大人自身も助けを求める姿勢は、子どもにとって「頼っていいんだ」という大切なメッセージになります。

まとめ|「助けて」が言えることは、子どもの安心して生きる力になる
「助けて」と言えることは、決して弱さではありません。
それは、自分を守り、人とつながり、困難を乗り越えていくための大切な力です。
頼る力は、日々の関わりの中で少しずつ育っていきます。
「一人で頑張れたこと」だけではなく、「助けてと言えたこと」も認めていくことが大切です。
そして、子どもにとって安心して頼れる大人であることが、SOSを出せる力を育む土台になります。
「困ったときは、一人で頑張りすぎなくていいんだよ。」
子どもが安心して「助けて」と言える経験を積み重ねることは、これからの人生を支える大切な生きる力につながっていきます。
最後に読者へ伝えたいメッセージ
子どもが困ったとき、「一人で頑張らなきゃ」ではなく、
「困ったら誰かに助けてもらっていい。」と思えること。
それは、これから先の人生で、子ども自身を支える大切な力になります。
そして、その力は特別なことではなく、
- 話を聞いてもらえた経験
- 「助けて」と言えた経験
- 「ありがとう」と受け止めてもらえた経験
そんな日々の小さな積み重ねの中で育っていきます。
「困ったときは、一人で頑張りすぎなくていいんだよ。」
そのメッセージを、ぜひ子どもたちに伝えていきたいですね。
・・・今日も一日ちはるびより
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